2006 Fiscal Year Annual Research Report
寒冷地に定着する植物-微生物共生系の養分・水獲得機能を利用した荒廃地の環境修復
Project/Area Number |
17580211
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
立石 貴浩 岩手大学, 農学部, 助教授 (00359499)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝田 智俊 岩手大学, 農学部, 教授 (10089930)
颯田 尚哉 岩手大学, 農学部, 助教授 (20196207)
登尾 浩助 明治大学, 農学部, 助教授 (60311544)
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Keywords | 共生 / アーバスキュラー菌根菌 / 荒廃土壌 / 土壌微生物 / 養分動態 / 酸性ホスファターゼ / 環境修復 / パイオニア植物 |
Research Abstract |
北上山地の準平原には、風衝、凍結による母岩の露出や土壌の荒廃した地点が点在するが、そのような寒冷荒廃地では、貧栄養や冬期の低温にも関わらず、先駆植物群落が部分的に定着している。同地点の土壌は、黒ボク土の特徴を反映して植物に利用可能な可給態リンが非常に乏しいため、この様な環境に定着する草本群落は成長と維持のために土壌中の限られたリン資源を効率的に獲得するシステムを持っているものと考えられる。本研究では、植物のリン吸収を改善するアーバスキュラー菌根菌(以下AM菌)に着目し、寒冷荒廃地の黒ボク土に含まれるリンの可給態化に対するAM菌の寄与について検討した。岩手県北部に位置する安家森(標高1,239m)の山腹に広がるシバ群落およびミノポロスゲーヤマヌカポ群落において、植物根および土壌を採取し、AM菌感染率、AM菌胞子数、微生物バイオマス炭素、菌糸長、および酸性ボスファターゼ活性(以下APase)を測定した。さらに、現地土壌より回収した土着AM菌胞子および草本植物を用いたポット試験により、AM菌の感染、土壌APaseおよび植物のリン吸収の間の関係について検討した。調査地の植物群落のAM菌感染率は6〜34%の範囲にあった。調査地土壌のAPase-AM菌感染率の間には有意な相関は認められなかったが、APase-微生物バイオマス炭素の間では認められた。ポット試験では、供試植物にAM菌は感染しており、培土中の可給態リンは痕跡であるにもかかわらず、植物によるリンの吸収は認められた。AM菌に関わるパラメータ(感染率、胞子数、菌糸長)、APaseおよび植物のリン吸収量の各々の間で相関分析を行ったところ、APaseと一部のパラメータの間に正の相関が認められたが、AM菌とAPaseとの直接的な関係性は見い出せなかった。以上の現地調査およびポット試験の結果より、黒ボク土でのリンの可給態化にはAPaseが関与している可能性が示唆された。
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