2005 Fiscal Year Annual Research Report
ブタ卵母細胞のガラス化保存後の体外成熟と精子注入(ICSI)による胚発生
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17580242
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
福井 豊 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (40120547)
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Keywords | 畜産学 / バイオテクノロジー / ブタ / ガラス化保存 / 体外成熟 / 顕微授精 / 胚発生 / 卵母細胞 |
Research Abstract |
本年度は、主に3つの実験を行った。 実験1は、ブタ体外成熟卵子への顕微授精(卵細胞質内精子注入:ICSI)における5mM dithiothreitol(DTT)処理(0、10,30,60分)と3頭の雄豚の影響を検討した。その結果、1)30分間のDTTにより正常受精率および胚盤胞率が有意に向上すること、2)ICSI後の胚盤胞率は精子を提供した雄豚により差異がある、ことを示した。 実験2では、体外成熟用限定培地におけるcysteamine(Cys)またはβ-mercaptoethanol(β-ME)の添加効果を検討した。その結果、卵子成熟率および正常受精率に有意差は認められなかった。ICSI後のβ-ME区の分割率(56.3%)は、Cys区(72.8%)と卵胞液添加区(72.2%)と比較して、有意に(P<0.05)低かったが、胚盤胞への発生率は、Cys区で36.7%、β-ME区で27.1%と、卵胞液添加区(31.4%)と同等であり、対照(無添加)区(15.6%)に比べ有意に(P<0.05)高かった。また、得られた胚盤胞の平均細胞数に有意差は認められなかった。以上の結果から、ブタ体外成熟用限定培地に100μM cysteamineまたは100μM β-mercaptoethanolを添加することにより、ICSI後の胚盤胞率を無添加区よりも有意に向上させ、かつ卵胞液添加区と同様の結果が得られた。 実験3として、ブタ体外成熟卵子のガラス化保存における卵丘細胞の有無、平衡時間(1分または4分)、およびTaxol(0,0.5,1.0,5.0μM)前処理の効果について検討した。ガラス化には、30% ethylene glycol(EG)+0.5M sucrose液を用いて、クライオトップ法で行った。その結果、加温後の卵子の正常形態率は、平衡時間と卵丘細胞の有無において、有意な(P<0.05)相関関係が見られた。即ち、卵丘細胞が付着した卵子では4分の平衡時間が、卵丘細胞除去した卵子では、1分の平衡時間が有効であった。ガラス化卵子のICSI後の胚発生率は、7.1〜8.2%と新鮮卵子の30.6%に比べて有意に(P<0.05)低率であった。一方、Taxolの前処理の効果は認められず、胚盤胞率(1.4〜8.8%)は新鮮卵子区の37.5%より有意に低率であった。
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