Research Abstract |
【目的】我々はこれまでに,免疫細胞より産生されるサイトカイン(腫瘍壊死因子; TNF, interferon gamma ; IFN)がウシ黄体の機能調節に深く関与することを示してきた。一方,近年,血管内皮細胞から産生されるエンドセリン-1(ET-1),一酸化窒素(NO)およびprostaglandin(PG)F2α;などの血管作動性物質が黄体退行に関与することが示唆されているが,ウシ黄体より単離した血管内皮細胞(LEC)を用いた詳細な検討は未だ為されていない。本研究では,LECにおけるサイトカインの生理的役割を明らかにすることを目的とし,LECのPGF2α, ET-1およびNO合成におよぼすTNFおよびIFNの影響について検討した。 【方法】ウシ中期黄体よりmagnetic beadsを用いて単離したLEC(passage 6-10)を,コンフルエントに達するまで培養した。培養液を交換し,TNF(50ng/ml)およびIFN(50ng/ml)を単独または組み合わせて添加し,さらに24時間培養を継続した。培養終了後,培養上清中のPGF2αおよびET-1濃度をEIAにより,NO合成量をGriess試薬により測定した。細胞数の指標としてDNA量を測定した。 【結果】LECにおいて,TNFはPGF2α,ET-1およびNO合成を有意に増加させた(P<0.05)。一方,IFNはLECのPGF2αおよびNO合成を有意に増加させたが(P<0.05),ET-1合成におよぼすIFNの影響は認められなかった。以上のことから,ウシ黄体において,TNFおよびIFNがLECのPGF2α,ET-1およびNO合成の主要な調節因子であることが明らかとなり,これらのサイトカインがPGF2α,ET-1,NOといった血管作動性因子を介して黄体の分泌機能および血管機能調節に関与する可能性が示唆された。
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