Research Abstract |
これまでに我々は,抗ヒアルロニダーゼ作用を示すオリゴ糖をブタ卵の体外受精培地へ添加したところ多精子受精が有意に減少することを明らかにした。しかし,オリゴ糖は精子-透明帯間の糖鎖修飾にも影響を及ぼす為,オリゴ糖による多精子受精抑制効果は,ヒアルロニダーゼ阻害作用に起因するものか,もしくは糖鎖修飾に起因するものかと云った解明すべき問題が発生した。そこで本研究では,タンニン関連化合物類から抗ヒアルロニダーゼ作用を有する物質を探索すると共に,これら抗ヒアルロニダーゼ物質がブタ体外受精時の多精子受精を抑制できるか否かを検討した。 まず初めに,タンニン関連化合物類のブタ精子ヒアルロニダーゼ活性阻害能を測定したところ,タンニン酸とエラグ酸は濃度依存的に5μg/ml以上の濃度でヒアルロニダーゼ活性を顕著に阻害した。一方,没食子酸には全くヒアルロニダーゼ阻害作用は検出されなかった。しかし,エラグ酸を除いた没食子酸とタンニン酸には強い抗酸化活性が認められた。次に,体外成熟ブタ卵の体外受精培地に0-10μg/mlタンニン関連化合物を添加し体外受精を行った。その結果,5μg/mlのタンニン酸とエラグ酸添加区では,高い精子侵入率(70%以上)を維持した状態で多精子受精が抑制され(37%と19%),没食子酸区や無処理区の多精子受精率(48%と54%)に比較して有意に低い値を示した。また,各タンニン関連化合物が,卵透明帯への結合精子数やアクロシン活性を阻害したり,タンパク分解酵素による透明帯可溶化反応の抵抗性を増加させるといったことはなかった。 以上の結果から,タンニン関連化合物類の内,強い抗ヒアルロニターゼ作用を有するタンニン酸とエラグ酸は多精子受精を効果的に抑制し,その作用機序に抗酸化活性,精子-透明帯間の糖鎖修飾ならびにアクロシン活性は関与していないことが明らかとなった。
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