2005 Fiscal Year Annual Research Report
コラーゲンによる血栓形成におけるトロンボキサンA_2、ADPとのクロストークの意義
Project/Area Number |
17580258
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
伊藤 勝昭 宮崎大学, 農学部, 教授 (70136795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 正浩 宮崎大学, 農学部, 助教授 (60281218)
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Keywords | 血小板 / 濃染顆粒 / ADP / コラーゲン / トロンボキサンA_2 / Chediak-Higashi症候群 |
Research Abstract |
血管が破綻して、血小板が内皮下組織にあるコラーゲンに接触すると、コラーゲンは血小板を活性化し、血小板の粘着、凝集を起こして血栓を形成する。コラーゲンは、それ自身の凝集作用だけでなく、血小板内の濃染顆粒からADPを放出し,かつアラキドン酸カスケードを活性化してトロンボキサンA_2(TXA_2)を合成し、ADPとTXA_2がコラーゲンの作用を増強する。しかしADPやTXA_2がコラーゲンによる凝集においてどういう役割を果たしているかは詳細には検討されていない。そこで遺伝的に濃染顆粒が欠損しているChediak-Higashi症候群(CHS)のウシの血小板と正常なウシの血小板と比較することで内因性ADPやTXA_2の役割を検討した。今年度得られた主な知見は以下の通りである。 1.CHS血小板と正常血小板からのコラーゲンによるADP放出を比較するとCHS血小板でのADP放出量は正常血小板の1/20で、濃染顆粒欠損を反映していた。しかし正常血小板でもコラーゲンによって放出されるADP量はそれ単独では凝集を起こす閾値濃度には達しなかった。 2.中濃度コラーゲンによるTXA_2産生はCHS血小板でやや抑制されていたが、高濃度コラーゲンによる産生は正常血小板と差がなかった。TXA_2の活性アナログであるU46619は10μMまで投与しても凝集を起こさなかった。 3.閾値以下のADPとU46619を同時投与すると約50%の凝集が起こった。これは血小板内Ca^<2+>濃度の相加としても認められた。ADPの受容体にはP2Y1とP2Y12の2つがあるが、この増強に主に関わっているのはP2Y1であることが示唆された。 4.コラーゲンモノマーへの血小板の接着はコラーゲン受容体の一つα2β1を介して起こる。凝集閾値以下のADPはこの接着を増強し、ADPがα2β1を活性化することが認められた。 以上の結果より、コラーゲンによって放出されるADPは、(1)TXA_2と協力することによって凝集を起こす、(2)α2β1活性化を起こしてコラーゲンと血小板の結合を強める、これらの作用によってコラーゲンの凝集作用を強めていることが示された。ウシ血小板ではこれまでTXA_2は生理的意義がないといわれてきたが、今回の結果はウシ血小板でもTXA_2が重要な役割を有することを示した。
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