2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17580272
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
西野 佳以 麻布大学, 獣医学部, 講師 (00271544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斑目 広郎 麻布大学, 獣医学部, 助教授 (20173768)
舟場 正幸 麻布大学, 獣医学部, 助教授 (40238655)
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Keywords | ボルナ病 / ボルナ病ウイルス / ラット / 神経症状 / 中枢神経系 / 遺伝子変異 / 行動異常 / 運動機能疾患 |
Research Abstract |
[背景と目的]ボルナ病ウイルス(BDV)はモノネガウイルスに属する神経向性ウイルスである。BDVは感染動物に不顕性感染する場合もあれば運動障害や行動異常などの神経症状を引き起こす場合もある。各ウイルス株の遺伝子配列は多様性に乏しいのに対し、宿主動物の種類や系統、年齢および免疫応答に依存して脳炎が生じることから、ボルナ病は宿主側の要因により発症病態が規定されると考えられていた。その一方で、成ならびに新生仔Lewisラットのいずれに感染しても重篤な神経症状を引き起こすBDV(CRNP5株)を申請者らは報告しており、ウイルス側にも発症要因が存在することを示した[J.Virol.(76)8650-8656,2002]。H18年度は、仔ラットにおけるBDV-CRNP5株の病原性をさらに調べることを目的として、同株を各種新生仔ラットに脳内接種しその感染病態を解析した。また、ラットおよびマウスにおけるウイルスの継代がウイルス遺伝子に及ぼす影響(遺伝子変異)についても調べた。 [結果] 1.CRNP5に感染した仔ラットの発症病態には系統差が認められた。調べた6系統のラットのうちLewis, F344,およびBNは感染したラット全頭(それぞれ9匹、9匹、及び13匹)に致死的なボルナ病がみとめられ、CRNP5株高感受性であった。WistarおよびCDでは、それぞれ6/9匹、及び5/9匹が致死的なボルナ病を発症し、中程度の感受性であった。Donryuでは感染した8匹全てが発症せず低感受性であった。 2.ラット継代株であるCRP3株とマウス継代株であるCRNP5株は、その親株はMDCK/He80株である。ラットにおける病原性は明らかにCRNP5株の方が高いが両株におけるアミノ酸の違いは4個所のみである[J.virol.(76)8650-8656,2002]。H18年度は、これらの4個所の遺伝子変異のうち、L-ポリメレースの1686番目のアミノ酸について、He80株、CRP3株、CRP7株(ラット7代継代株)そしてCRNP5株の同アミノ酸を含む領域を遺伝子クローニングし、継代による変異の推移を調べた。その結果、親株であるHe80株では同アミノ酸は調べたクローンの100%がアルギニンであったが、CRP3株では93.3%、CRP7株では30.8%に減少し、全てグリシンに置き換わっていた。一方、CRNP5株では100%がアルギニンであった。以上の結果から、1686番目のアミノ酸はラットを宿主として馴化する場合にはグリシンが、ラット以外の宿主に馴化するためにはアルギニンが要求されるcriticalな領域であることが示唆された。
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