2005 Fiscal Year Annual Research Report
犬と猫に急増している悪性中皮腫の診断技術確立に関する臨床病理学的研究
Project/Area Number |
17580278
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
町田 登 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究部, 助教授 (20219364)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 綾 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究部, 助教授 (70334480)
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Keywords | 中皮腫 / 体腔液 / 細胞診 / 形態計測 / 免疫細胞化学的染色 / セルブロック / 犬 / 猫 |
Research Abstract |
中皮腫の臨床診断精度の向上をはかるべく、本年度は体腔液細胞診に形態計測と免疫細胞化学的染色とを応用することを試みた。体腔液塗抹標本の形態計測には、犬の胸膜中皮腫症例6例ならびに腫瘍性疾患以外の原因による胸水貯留症例8例を用い、胸水中に出現する中皮腫細胞ならびに反応性中皮細胞について以下の計測を実施した:細胞面積、核面積、核・細胞面積比、核の短径・長径比、核数、核小体数、核小体1個当たりの面積、細胞数分画。また、中皮腫細胞および反応性中皮細胞の免疫細胞化学的染色特性の検討には、胸水あるいは腹水検体からセルブロックの作製が可能であった犬の中皮腫症例3例ならびに非腫瘍性胸水貯留症例7例を用い、パラフィン切片に免疫染色を施し、以下のタンパクの発現性について調べた:サイトケラチン、ヒト上皮関連抗原(以上の2つは中皮腫および腺癌マーカー);ビメンチン、カルレチニン、スロンボモジュリン(以上の3つは中皮腫マーカー);ヒト上皮膜抗原、ヒト上皮抗原、癌胎児性抗原(以上の3つは腺癌マーカー)。体腔液塗抹標本の形態計測では、細胞面積、核面積、核小体1個当たりの面積、細胞数分画に関して両者の間に有意差が認められた。すなわち、中皮腫細胞の方が細胞、核、核小体ともに大きく、かつ大型の細胞集塊を形成することが明らかになった。一方、セルブロックの免疫細胞化学的染色においては、サイトケラチンおよびビメンチンに対して両者ともに陽性反応を示したが、特にサイトケラチン陽性細胞の割合は両者間で大きく異なっていた。すなわち、中皮腫細胞、反応性中皮細胞ともに大型の細胞ほどサイトケラチンを強く発現するため、全体としては中皮腫症例の陽性細胞率の方がはるかに高かった。これらの細胞計測および免疫細胞化学的な特徴を勘案することによって、体腔液を用いた中皮腫の診断確度をより高めることができる可能性が示唆された。
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