2005 Fiscal Year Annual Research Report
自己免疫疾患の新しい分子機構論:中枢性トレランスの破綻による自己への攻撃
Project/Area Number |
17580282
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
滝口 満喜 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (70261336)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷山 弘行 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (90133800)
今野 明弘 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助手 (00271651)
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Keywords | 自己免疫疾患 / 中枢性トレランス / シェーグレン症候群 / IQI / Jic |
Research Abstract |
高次生体における免疫システムは、外来抗原に対して排除応答を示すものの自己抗原に対しては応答しない。この抗原特異的に不応答を示すトレランスは免疫系の重要な特徴で、自己抗原に対するトレランスの破綻は、免疫系による生体自己組織への攻撃と破壊すなわち自己免疫疾患をもたらす。我が国で樹立されたIQI/Jicマウスは、代表的なヒト自己免疫疾患であるシェーグレン症候群(SS)の患者と極めてよく似た病態を示すことから、そのモデルマウスとして期待されている。申請者らは、本マウスではSSに特徴的な涙腺炎や唾液腺炎などに加え、加齢に伴い膵臓、腎臓、肺などに病変が拡大することを示すとともに、その原因となる自己抗原が臓器特異的なカリクレイン13であることをつきとめた。さらに、その発症における末梢性トレランスの関与を調べる目的で、生後3日目に胸腺を摘出して末梢性トレランスを担う制御性T細胞を除外したところ、唾液腺の病変に変化が見られなかったことから、本マウスのSS様病変の形成は末梢性トレランスの破綻によるものではないことを証明した。 従来、自己免疫疾患の発症は、主に"末梢性トレランスの破綻"によると考えられてきたが、折しも最近Gotterらによって、それまで個々の組織で合成されると考えられていた組織特異的抗原の遺伝子が、胸腺上皮細胞に多数発現していることが示された。これは胸腺上皮細胞がネガティブセレクションを担う可能性を示唆するものであり、これらのことから、IQI/Jicマウスにおける自己免疫病は、自己抗原であるカリクレイン13が胸腺上皮細胞によって抗原提示されず、カリクレイン13反応性T細胞の排除ができないために発症する可能性が浮上する。 そこで本研究では、まず、新生子胸腺においてカリクレイン13遺伝子が発現していないことを示し、胸腺内に自己抗原反応性T細胞が存在することを証明することから着手している。
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