Research Abstract |
メゾ環境勘定として,オランダのNAMEAのフレームワークに基づくハイブリッド型統合勘定を構築した。我々は,EF(エコロジカルフットプリント)分析を環境勘定に導入し,環境負荷と環境便益の統一的記帳を行い,EFと経済指標を融合させたデカップリング指標(EFDI)の開発を試みた。このような方法で,北海道地域の農林業を対象としたメゾ環境勘定の推計を行った。その結果,1995年から2000年の間に,北海道内の農林業活動による環境負荷はEF値で約7%減少し,環境便益は大きな変化が無いことが明らかとなった。EFでは正値で環境負荷を負値で環境便益を表現することにより,結果として環境便益が環境負荷を上回るものと推計された。また,農業生産額を経済指標としたデカップリング指標を産出した結果,この間,北海道の農林業活動の環境効率は改善されており,持続可能な方向性を持つことも確認された。 ミクロ農業環境会計については,稲作農家を対象としたミクロ農業環境会計の開発を行った。ミクロ的な農業生産活動と環境負荷および多面的機能の関係を定量的に示す実証研究データが不十分なため,農業生産活動が環境へ及ぼす影響を網羅的に把握することは困難で,メゾ環境会計やマクロ環境会計とのリンクによる相互関係の分析が必要であることが確認された。 農林業が生み出す多面的機能は,農林地等のストックの量と質に大きく依存する。観測可能な因子は生産に関連する経済データや投入される物質や土地面積などの物量データである。しかし,環境便益自体は観測困難であるため,潜在因子として因果モデルに導入することになる。また,環境便益は公共財であることから,その受益者は社会全体となる。最も単純な因果モデルはMIMICモデルである。さらに,ストックの質を潜在変数と定義すれば,多重指標モデルが適用できる。基本モデルとしては,経済データとストックデータを原因側の観測変数とし,結果側にマクロ経済指標,その間に環境便益を潜在変数とする因果モデルを構築した。
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