Research Abstract |
高齢化社会がうたわれて久しい今日,1,100万人以上と推定される骨粗鬆症患者から起こる骨折から「寝たきり」の生活に入り,高齢者の生活の質(QOL)の低下と医療費の大幅な上昇を招く連鎖は,今後深刻に受け止められるべき社会問題である.わが国では一貫して高齢化の進行が予想され,高齢者のための骨形成と骨吸収のバランスのとれたより良い骨粗鬆症薬を開発することが急務である.汎用されるビスホスホネート製剤では,破骨細胞の機能低下のみに作用し骨形成が伴わないので,本質的な骨折の危機の回避は達成されない. 我々は,昨年度から継続で高カルシウム血症を起こしにくい活性型19-ノルビタミンD_3の2位にヒドロキシプロピル基を導入した誘導体を合成し,前立腺細胞に対する細胞増殖抑制効果を調べ,ED_<50>値は6.1±2.1x10^<-11>Mという極めて高活性化合物を見出した.ちなみに天然の活性型ビタミンD_3では,同一条件下ED_<50>値は6.1±2.5x10^<-8>Mであり、3桁もの違いが確認された.また、前立腺がんの細胞浸潤抑制効果も天然の活性型ビタミンD_3を10倍上回る活性が認められた.本年度は,19-ノルビタミンD_3を特に14位のエピ化を加味した新規誘導体を含め15種類合成し,前立腺細胞への効果のみならず,骨形成活性を調べることに重点を置き,骨肉腫由来のHOS細胞を用いて骨芽細胞に対する直接作用を調べた. その中で,天然ホルモンの活性型ビタミンD 3(ED_<50>値0.040nM)を上回るED5_<50>値(0.019nM)を示す誘導体が見出された.この化合物を含む有力な新規化合物3種を選択し,ラットOVXモデル(卵巣摘出手術後)投与を行い,椎骨の骨密度を測定したところ,1日1回週5回の0.1μg/kg投与で骨密度が18%程度増加することを確認した.しかもこのとき血中カルシウム濃度の上昇はほとんど見られず(0.4%以内)次世代の骨粗鬆症薬として注目すべき骨格を提供するに至った. 今後はCYP27A1,CYP27B1,CYP24A1などによる本化合物の代謝経路についても調べる.
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