2006 Fiscal Year Annual Research Report
有機触媒による光学活性4級炭素構築法の確立と生物活性化合物合成への展開
Project/Area Number |
17590023
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
原 脩 名城大学, 薬学部, 助教授 (40222228)
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Keywords | Setter反応 / 4級炭素構造 / アゾリウム塩 / フルオラス化合物 |
Research Abstract |
有機触媒とは触媒活性を有する有機化合物で、化合物の変換、精製、及び構造解析が容易であり、水分や空気に対する安定性が高いといった金属触媒にはない特徴を持っている。しかし、これらの反応は実用的応用例が少なく、また、触媒反応としては使用される触媒量が多く、この点も実際の利用頻度が増えない原因ともなっている。本年度は、これらの利用範囲を広げることも含め、アゾリウム塩が触媒する反応の拡大と触媒の有効利用に関して検討を行った。分子内Stetter反応の報告は、サリチルアルデヒド誘導体のような、分子内に芳香族を含む基質や脂肪族アルデヒドでの5員環構築がほとんどである。よりこの反応の用途を広げるためには、脂肪族アルデヒドを基質として6員環を構築する方法を確立することが必要と考えられた。いくつかのアプローチにより環化前駆体をデザインし、その基質の合成を行い、Stetter反応を検討したところ、マロン酸エステルより誘導した基質では78%で目的物を得ることができた。これらの結果より、ジェミナル置換基を有する化合物が6員環形成において有利であることがわかった。これは、Thorpe-Ingold効果が、分子内Stetter反応においても有効に機能していることを明らかとした。 一方、触媒効率を向上させるためには、新たな方法論による試みが必要であると考え、その方法としてフルオラスケミストリーに着目した。ライトフルオラス触媒とヘビーフルオラス触媒、両タイプのフルオラスチアゾリウム塩は市販のチアゾール誘導体と対応するフルオラス化合物より15〜50%の収率で合成した。そして、これらのフルオラス触媒はStetter反応において従来の触媒とほぼ同等の触媒活性を示し、ヘビーフルオラスの触媒では90%という高収率で四級炭素の構築に成功した。また、ライトフルオラス触媒ではフルオラス固相抽出法、ヘビーフルオラス触媒では液相一液相抽出法を用いることで、触媒活性を有する化合物が回収できることを明らかにした。この方法を利用することでそれぞれの触媒は5回再利用することができ、回収後の化学収率は40〜50%で、どちらもほぼ同等に触媒作用を維持していることがわかった。残念ながら、いずれの触媒も再利用により当初の触媒活性が低下しており、今後この点を改善する必要があることが明らかとなった。
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