Research Abstract |
福山らによってViburnum awabukiから単離構造決定されたビブサン型テルペノイドは,NGF存在下に,神経突起伸展促進作用を有し,アルツハイマー型の神経変性疾患の治療薬開発のためのリード化合物として期待が持たれている。なかでも申請者らは,ネオビブサニンA及びBがビステトラヒドロフラン骨格を含むユニークな構造を有していることに興味を持ち,その全合成をめざして研究を展開した。その結果,DMIによって加速される,分子内Diels-Alder反応を新たに開発し,これを鍵反応として,4-エピ-5-エピネオビブサニンAの全合成を達成する事ができた。PC12細胞を用いた,神経突起伸展促進作用を調べたところ,非天然型の4-エピ-5-エピネオビブサニンAは,NGF存在下に,天然物のネオビブサニンBと同程度の神経突起伸展促進活性を示すことが確認できた。すなわち活性発現には,4位や5位の立体化学は関係しない事が明らかになった。また構造を単純化した誘導体として,ネオビブサニンの母核であるシクロヘキセンにヒューズしたビステトラヒドロフランだけを有する誘導体を合成したところ,条件によっては,天然物を凌ぐ活性を示す事が見出され,活性発現に必要な最少構造単位が明らかになった。これらの化合物は医薬品のシードとして期待できる。さらにアセタール部分の構造活性相関を調べたところ,炭素鎖2のエタノール,また炭素鎖3のプロピル,アリルアルコールのアセタールまでは,活性を示すものの,ベンジルアルコールやヘキサノールなど,それ以上長くなると,活性が全く消失することが明らかとなった。この事から,活性を保持したまま,アセタール部分に蛍光発色団を導入することは,不可能であることが判った。そこで今後の展開として,8位のエノールエステル部分の誘導体を合成し,その活性を評価し,プローブ化に必要な蛍光発色団を導入可能が検討する計画である。
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