2006 Fiscal Year Annual Research Report
インスリンに代表されるペプチド/タンパク質医薬の経口デリバリーシステムの開発研究
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17590044
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
森下 まり子 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (70257096)
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Keywords | 薬物送達システム / インスリン / バイオ医薬 / 経口投与 / バイオアベイラビリティ / 細胞膜透過性ペプチド / 吸収改善 / ハイドロゲル |
Research Abstract |
本研究は、優れた高分子薬物送達キャリアであるスマートハイドロゲルpoly(methacrylic acid) grafted with poly(ethylene glycol)に細胞膜透過性ペプチド(CPP)をハイブリッドさせることにより、より高いバイオアベイラビリティ(BA)を保証するバイオ医薬の経口製剤化技術を完成させることを最終目標としている。平成18年度はスマートハイドロゲルに各種CPPを適用してその有用性を評価し、さらにCPPの高分子薬物吸収促進機構について検討した。 1.経口送達キャリア:スマートハイドロゲルの膜透過性ペプチドへの親和性の評価 薬物封入実験:インスリンおよびGLP-1の封入率はそれぞれ約90%および55%、またオリゴアルギニン(R6)およびHIV-tatでは約50%となった。封入効率には相違があるものの、いずれの物質もハイドロゲル中に再現よく封入されることが明らかとなった。 薬物放出実験:インスリンおよびCPPはPBS中でハイドロゲルからの速やかな薬物放出が認められた。また、GLP-1については、pH依存性の放出挙動が明らかに認められた。 薬物吸収性の評価:in vivo吸収実験の結果、インスリン-CPP併用ハイドロゲル投与群において薬理学的利用率の改善が認められ、その作用はHIV-tatの方がR6より大きいことが明らかとなった。一方、GLP-1ではハイドロゲル投与群においてコントロール群と比較して著明な血糖低下作用は得られなかった。 各種CPPの吸収促進作用の評価:試験を行った8種類(アルギニンに富むペプチド2種、両親媒性ペプチド4種、プロリン塩基性アミノ酸疎水性アミノ酸の配列を持つペプチド1種および未知のペプチドをランダムに配列させたペプチド1種)のCPPの中で、ペネトラチンがインスリン消化管吸収性を強く改善することが明らかとなった。 2.膜透過性ペプチドによる高分子薬物吸収促進機構 インスリンとオリゴアルギニンとの親和性の評価:限外ろ過法および平衡透析法を用いてオリゴアルギニンとインスリンとの分子間相互作用を検討した結果、両者の親和性は予想に反して非常に弱いものである可能性が示唆された。 FD-4の腸管吸収性に及ぼすCPPの影響:オリゴアルギニン(R8)およびpenetratinによる荷電を持たない高分子薬物FD-4の腸管吸収性への影響について検討を行った。L-およびD-R8いずれの添加においてもFD-4の吸収に対して影響は認められなかった。一方、penetratinを添加した場合には、FD-4吸収の上昇が認められ、D-penetratin添加においてより強い吸収促進が起こることが明らかとなった。このことからpenetratinについては静電的な相互作用を介さない吸収促進機構の関与が示唆された。
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Research Products
(9 results)