2006 Fiscal Year Annual Research Report
インテグリン機能増強による癌細胞のプログラム細胞死誘導とその抗癌剤創製への応用
Project/Area Number |
17590074
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
深井 文雄 東京理科大学, 薬学部, 教授 (90124487)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兒玉 浩明 佐賀大学, 理工学部, 助教授 (80205418)
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Keywords | 接着 / インテグリン / テネシン / Ras / MAPキナーゼ / アポトーシス / G2 / M / 悪性腫瘍 |
Research Abstract |
我々は、接着の足場となるマトリックス分子自身の内部にインテグリン活性化を正負に調節する機能部位が存在することを明らかにしてきた。その一つであるテネシン-C分子内の機能部位を含むペプチドTNIII(後述)によって、足場拘束性が低下した悪性細胞WI38VA13のインテグリンを活性化するとその造腫瘍性が消失すると共に、強制的にマトリックス上に接着させると変異活性型Rasを発現するがん細胞の場合は、カスパーゼ依存性細胞死が誘導されることを見出した。重要なことに、TNIIIは正常繊維芽細胞に対しては、増殖因子のように生存、増殖をむしろ亢進する。 本年度は、インテグリン活性化ペプチドTNIIIによるがん細胞のプログラム細胞死誘導の分子機構を究明すると共に、インテグリンを分子標的とした抗がん剤創製を展望し、TNIIIによる細胞死誘導を高率化するためのTNIIIの分子修飾を行い以下の結果を得た。 1)WI38VA13をTNIII処理すると、細胞がG2/M期で停滞すると共に、細胞が二核化することが明らかになった。インテグリン活性化作用をもつMg2+でも同様の傾向が認められ、インテグリン活性化が関与する可能性が示された。 2)TNIII処理すると、サイクリンBに続いてサイクリンDの発現を上昇させた後、pRBの脱リン酸化を引き起こした。そこで、M期に同調させた細胞にTNIIIを作用させたところ、対照において分裂が終了した90分後でもサイクリンBの発現レベルが高く維持されていた、かつMAPK/ERKの脱リン酸化も認められた。 3)正常繊維芽細胞NIH3T3はTNIII処理によってその増殖が亢進したが、活性型Rasを発現させるとTNIII処理によってアポトーシスが誘導されるようになった。更に、Rasが活性化しているWI38VA13細胞に恒常的活性型Rasをトランスフェクトすると細胞死が誘導された。 以上の結果、TNIIIは活性化Rasをもつ悪性細胞の場合は、インテグリン活性化によってRas/MAPK経路がオーバーフローし、これによってG2/M停滞、二核化などの異常が蓄積し細胞死が引き起こされたのではないかと推測された。TNIIIの生体内安定化の方策の一つとして、アミノ末端のメチル化、アセチル化が有効であることが示された。
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Research Products
(6 results)