2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヒ素発がん究極活性体の同定とその代謝生成機構の解明
Project/Area Number |
17590110
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山中 健三 日本大学, 薬学部, 助教授 (50182572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 孝一 日本大学, 薬学部, 講師 (60246931)
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Keywords | 環境化学発癌 / ヒ素発癌機構 / ジメチルアルシン / ジメチルアルシン酸 / 発癌プロモーション / 発癌イニシエーション / 酸化ストレス |
Research Abstract |
ジメチルヒ素の究極還元代謝物であるジメチルアルシンは、酸素分子と反応しジメチルヒ素過酸化体およびジメチルヒ素過酸化ラジカルを生成することを既に確認しているが、本研究はこれら活性種の発癌initiationの有無を明らかにすることを目的とする。昨年度、この発癌initiation作用を明らかにするために、A/J系マウス短期肺発癌実験系を用いて検討を加えた結果、体重減少等の一般毒性は見られなかったにもかかわらず、コントロール群に比べて有意な腫瘍発生数の増加が認められた。また、一部にはadenocarcinomaへの悪性化が見られた。本年度は、昨年度の結果を踏まえて、ddY系マウスをも用いて発癌試験性を検討した。その結果、A/J系マウスと同様に、肺発癌性が観察された。 一方、これまで無機ヒ素の主要代謝物であるジメチルアルシン酸(DMA)の還元代謝物であるジメチル亜ヒ酸((CH_3)_2AsOH)はジメチルヒ素過酸化体を介して酸化ストレス誘発をひきおこし、発癌promotion作用に大きく寄与する可能性を推定してきた。一方、ヒ素汚染地域の飲水用井戸水中のヒ素濃度と鉄濃度の間に正の相関があることも報告されており、酸化ストレスの原因活性種の異なるジメチルヒ素と鉄(鉄の過剰負荷により生ずるOHラジカル)の相互作用による発癌影響に興味がもたれる。今回、4NQOならびにDMAを用いたマウス短期肺発癌モデルを用いて、鉄の飲水投与による肺発癌への影響を検討した。4NQO投与後DMAおよび硫酸第一鉄同時投与群は、DMA単独投与群に比べ、顕著な腫瘍発生率の増加が認められ、さらに、末梢気管支のクララ細胞において顕著な酸化ストレスの誘発が免疫組織化学的に認められた。このことから、鉄の投与はジメチルヒ素による酸化ストレスを増強して、ジメチルヒ素による肺発癌promotion作用を促進する可能性が推定された。
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