2005 Fiscal Year Annual Research Report
心不全の個別薬物療法を目的としたβ遮断薬の体内動態変動機構と人種差の解明
Project/Area Number |
17590117
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
橋本 征也 富山大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (90228429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
能澤 孝 富山大学, 医学部, 助教授 (00180737)
田口 雅登 富山大学, 大学院薬学研究科, 助手 (20324056)
合葉 哲也 岡山大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助教授 (00231754)
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Keywords | カルベジロール / ビソプロロール / メトプロロール / CYP2D6 / 心不全 / β遮断薬 |
Research Abstract |
近年の欧米における大規模臨床試験により、慢性心不全に対するβ遮断薬投与の有用性が明らかとなった。しかし、β遮断薬のカルベジロールは日本人における標準投与量が欧米と大きく異なることや、治療効果に大きな個体差が認められる事が報告されており、その原因は不明である。肝代謝型β遮断薬の代謝にはチトクロームP450(CYP)2D6が主に関与すると推定されているが、その遺伝子多型には人種差があり、欧米人では約7%がpoor metabolizer(PM)であると報告されている。一方、日本人ではPMの頻度は1%以下であるが、^*10変異の発現頻度が高いために、extensive metabolizerの中にも代謝活性の低い人が数多くいる。これまでに、β遮断薬(メトプロロールおよびビソプロロール)の体内動態に及ぼすCYP2D6^*10の影響を検討したところ、肝代謝を受けるメトプロロールの経口クリアランスは^*10を持つ患者において顕著に低下した。一方、約50%が腎排泄を受けるビソプロロールの経口クリアランスには^*10の影響が認められなかった。そこで、我々は日本人健常ボランティア54人を対象に、カルベジロールの体内動態に関わる、CYP分子種、グルクロン酸抱合酵素、および消化管吸収に関わるP-糖蛋白質の遺伝的多型の影響を、非線形混合効果モデル(NONMEM)法と重回帰分析法を用いて検討した。その結果、カルベジロールの経口クリアランスはCYP分子種のうちCYP2D6^*10のホモ接合体をもつ被験者ではCYP2D6^*10を持たない被験者に比べ、R体では51%、S体では30%減少した。また、他の影響因子の遺伝的多型による体内動態の変動性は認められなかった。これらの結果はカルベジロールの投与設計を行う上において重要な知見となると考えられた。
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