2006 Fiscal Year Annual Research Report
心不全の個別薬物療法を目的としたβ遮断薬の体内動態変動機構と人種差の解明
Project/Area Number |
17590117
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
橋本 征也 富山大学, 大学院医学薬学研究部, 教授 (90228429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
能澤 孝 富山大学, 大学院医学薬学研究部, 助教授 (00180737)
田口 雅登 富山大学, 大学院医学薬学研究部, 講師 (20324056)
本多 睦子 富山大学, 大学院医学薬学研究部, 助手 (60422630)
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Keywords | 心不全 / β遮断薬 / 薬物体内動態 / 人種差 |
Research Abstract |
交感神経β受容体遮断薬は、高血圧や狭心症など治療に繁用されているが、1980年代までは心不全患者に投与禁忌とされてきた。しかし、欧米の大規模臨床試験で、3種類のβ遮断薬(カルベジロール、メトプロロール、ビソプロロール)が心機能と生命予後を著明に改善したことから、β遮断薬は心不全の治療薬となりつつある。一方、近年日本でも心不全に対するカルベジロールの適応が認められたが、日本での標準的投与量が欧米と大きく異なる理由や、治療効果に大きな個体差が認められる原因は不明である。そこで本研究では、心不全の個別薬物療法を目指して、カルベジロールの体内動態変動機構と人種差の原因の解明を図るとともに、β遮断薬の薬効に及ぼす病態の影響についても検討を追加した。 健常者ボランティア54名を対象とした臨床試験を行い、カルベジロールの体内動態に及ぼす薬物酸化・抱合酵素およびトランスポーターの遺伝子多型の影響を評価した。カルベジロールの経口クリアランスは、日本人でアレル頻度が高いCYP2D6*10遺伝子の保有者において有意に低下したことから、CYP2D6*10が日本人におけるカルベジロールの体内動態変動の主要因であると推定された。また、β受容体の感受性が心不全や腎機能低下などの病態時に変化するとの報告があることから、両側尿管を結紮した腎障害モデルラットにおけるβ遮断薬の薬効評価を行った。その結果、β遮断作用が腎障害の影響を受けず、血中濃度データに基づくβ遮断薬の投与調節が重要である事が明らかとなった。本研究の結果は、心不全症例に対するβ遮断薬の個別投与設計法の開発に繋がる有用な知見と考えられる。
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