2005 Fiscal Year Annual Research Report
カルシニューリン阻害剤の体内動態・薬効の母集団解析と個別化投与設計法の開発
Project/Area Number |
17590121
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
矢野 育子 京都大学, 医学研究科, 技術職員 (50273446)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 智先 京都大学, 医学研究科, 講師 (90303825)
|
Keywords | シクロスポリン / タクロリムス / 免疫抑制剤 / 生体肝移植 / カルシニューリン / MONMEM |
Research Abstract |
臓器移植時に汎用されるカルシニューリン阻害剤であるタクロリムスとシクロスポリンの薬効特性について比較するため、生体肝移植患者において薬物血中濃度と同時に末梢血単核球細胞(PBMC)中のカルシニューリン活性を測定し、非線形混合効果モデルプログラムNONMEMを用いた母集団解析を行った。その結果、シクロスポリンの場合には、ピーク血中濃度付近の約700ng/mL以上でカルシニューリン活性はほぼ完全に抑制される一方、タクロリムスの場合には、治療域以上の血中濃度(>20ng/mL)においても部分的にしか阻害されないなど、カルシニューリン阻害特性に両薬剤で相違のあることが判明した。また、腎機能障害の発現は、両薬剤のトラフ濃度と有意に関連することが明らかになった。また、生体肝移植患者において、移植直後の吸収不良や肝機能の低下に伴う消失遅延によって、治療域のシクロスポリン血中濃度を得ることに難渋する症例が散見される。そこで、シクロスポリンの吸収プロファイルの改善並びに副作用軽減を目的に、1日1回投与法の有用性について、従来の1日2回投与法と比較検討した。1日2回投与法と比べ、1日1回投与法はトラフ濃度を上昇させず、有意に高いピーク濃度が得られ、カルシニューリン活性も効果的に抑制された。また、血清クレアチニン値の上昇は、1日1回投与群で低頻度であった。従って、1日1回投与法を用いた免疫抑制導入療法は、生体肝移植後早期のシクロスポリン吸収を改善し、カルシニューリン阻害効果を損なうことなく腎臓への負担を軽減することが示唆された。以上、本研究は、タクロリムスとシクロスポリンの薬効特性の相違とカルシニューリン活性測定の臨床的意義を初めて明らかにしたものである。
|