2006 Fiscal Year Annual Research Report
シスプラチン腎障害に対する細胞内サイクリックAMPを介する保護作用に関する研究
Project/Area Number |
17590129
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
伊藤 善規 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (50159927)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 了三 九州大学, 大学病院, 教授 (90112325)
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Keywords | シスプラチン / 腎障害 / アポトーシス / ネクローシス / カスパーゼ / p53 / p38MAPキナーゼ / TNF-α |
Research Abstract |
昨年度の研究において、ブタ腎近位尿細管由来細胞(LLC-PK_1)を高濃度シスプラチン(CDDP)に一過性曝露することによるネクローシスの発現には、活性酸素の過剰産生、それに続くp38MAPキナーゼ活性化およびtumor necrosis factor-α(TNF-α)の産生亢進が関与すること、プロスタサイクリン誘導体のベラプロスト(BP)により細胞内cyclicAMP(cAMP)産生を増加させることにより、TNF-α産生が抑制され、CDDPによる腎障害が抑制されることを見出した。 1)本年度の研究たおいてはin vivoによる実験を行った。ラットにCDDP(7.5mg/kg)を投与すると血清中クレアチニン(SCr)およびblood urea nitrogen(BUN)が増加し、この変化はBP(0.3mg/kg)投与により抑制された。さらに、CDDP投与ラットの腎組織中TNF-α含量が顕著に増加し、この増加はBP投与により抑制された。 2)一方、CDDP投与ラットの腎組織において、尿細管細胞の壊死、タンパク円柱の発現とともに、TUNEL染色で陽性に染色される細胞があったことから、ネクローシスとともにアポトーシスの関与が示唆された。この結果をin vitro試験に反映させるために、LLc-PK_1細胞にCDDPを種々の条件で暴露した。その結果、200μMCDDPに1時間暴露後、20μMCDDPに12時間暴露することにより、ネクローシスとともにアポトーシスが発現すること、さらに、前者には酸化的ストレスが、後者には種々のcaspases活性化が関与することが明らかとなった。 3)上記in vitroでのCDDP腎障害モデルにおいて、CDDP暴露によりcaspase-8,-9,-2-3の活性化が見られ、さらに、caspase-2活性化がcaspase-8および-9活性化を引き起こし、その結果caspase-3を活性化することにより核障害を引き起こすことが明らかになった。さらに、caspase-2の活性化にはp53活性化が関与することが明らかとなった。一方、CDDP暴露により、TNF-α産生が亢進し、この作用はp38MAPキナーゼ阻害剤のSB203580により顕著に抑制されたが、SB203580はCDDPによるcaspase活性化およびアポトーシスの誘導には影響しなかったことから、TNF-αはCDDPによるネクローシスには関与するがアポトーシスにはほとんど関与しないと考えられた。 以上の結果を総括すると、CDDP腎障害には、活性酸素/p38MAPキナーゼ活性化/TNF-α産生に基づくネクローシスとp53活性化/caspase-2活性化による一連のcaspases活性化によるアポトーシスの両者が関与すると考えられた。
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