2005 Fiscal Year Annual Research Report
BCRPと薬剤耐性-BCRPの基質認識機構とBCRPを標的とした耐性克服-
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17590139
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
池上 洋二 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (50322524)
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Keywords | 薬学 / 癌 / 薬剤耐性 |
Research Abstract |
(1)BCRPの遺伝子多型(SNPs)による基質特異性変化の検討 PC6/Q141Kで見られた相対耐性度低下の原因の一つとして、141番目のアミノ酸変異が翻訳に影響を及ぼし、タンパク質発現が低下したためと考えられる。しかしタンパク質発現がPC-6/WTの約65%に対し、耐性度の低下は約35%であったことから、他に何らかの要因が存在することが予想された。141番目のアミノ酸変異は日本人において特に高頻度で発現しており、この結果は更に追求する必要がある。141番目のアミノ酸はATP結合領域に存在するアミノ酸であり、変異の局在がBCRPの機能に影響するのではないかと考えられ、ATP結合領域に存在する変異、膜貫通領域に存在する変異、細胞の外側に存在する変異について現在検討中である。 (2)臨床検体におけるBCRPの発現の有無 リアルタイムPCR解析により検討を行った12例のうち、BCRPmRNAの発現量が正常組織よりも癌組織において高かった例と、癌組織よりも正常組織において顕著に高かった例が観察された。正常組織においてBCRPが高発現することにより、正常な組織が組織を保護するために抗癌剤を排出している可能性が考えられる。また、正常組織と癌組織でほぼ同程度のものが3例、癌組織において正常組織よりも高い発現が見られた例が2例であった。癌の悪性度を示す深達度、Stage分類、およびリンパ節転移等の状態は患者個々で様々であり、BCRPmRNA発現量と癌の状態や悪性度とは相関性が見られなかった。 (3)BCRP阻害剤の阻害機構と特異性の検討 ケルセチン、ノボビオシン、ZD1839がBCRPの輸送活性を強く阻害すること、BCRP発現細胞株において種々抗癌剤耐性を克服することを明らかにした。そこで、これら3種の阻害剤が、BCRP過剰発現細胞株に対して耐性を示すCPT誘導体の輸送活性を阻害し、耐性を克服するか否かを検討する目的で、BCRP遺伝子導入細胞株より調整した膜小胞を用い、輸送活性阻害効果を検討した。その結果、3種の阻害剤は各CPT誘導体の輸送活性を強く阻害することが明らかとなった。すなわち、BCRP過剰発現細胞株に対して耐性を示すCPT誘導体は、これら阻害剤を併用することにより、耐性克服の観点から有効性が向上することが示唆された。
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