2006 Fiscal Year Annual Research Report
知覚終末グリア網におけるカルシウム信号の生成・伝播機構-形態・分子解析-
Project/Area Number |
17590143
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
岩永 ひろみ 北海道大学, 大学院医学研究科, 助教授 (30193759)
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Keywords | 機械受容器 / 洞毛 / 終末シュワン細胞 / カルシウム画像化 / 知覚神経終末 / アデノシン5'-三リン酸 / ecto-ATPase / ラット |
Research Abstract |
アデノシン5'-三リン酸(ATP)は、グリアを含む非興奮性細胞間の信号物質として広く生体機能調節に関わる。私たちはこれまでに、ラット頬ひげの動き受容器、槍型神経終末をコラゲナーゼで分離して生理実験を行ない、槍型終末に随伴するグリア網が、細胞外ATPの刺激に対し細胞内Ca^<2+>濃度の一過性上昇を示すこと、この応答がプリン受容体亜型P2Y_2を介することを明らかにした。P2Y_2受容体は、ATPの分解産物ADPに不応である点を特徴とする。一方、知覚終末のグリア細胞は、細胞表面に強いATPase活性を示すことが、電顕レベルの酵素組織化学によって知られる。従って、この酵素が組織内で、ATPを介した終末グリアと周囲細胞との相互作用にどのような調節効果を及ぼすかが問題となる。この点を明らかにするため、上記分離標本を用い、機械刺激誘発性ATP放出に続く終末グリアの細胞内Ca^<2+>濃度上昇を、共焦点顕微鏡のコマ落とし画像として記録し、細胞外ATPase阻害剤ARL67156による細胞応答の変化を解析した。正常緩衝液中で槍型終末の先端に微小ガラス針で軽く触れると、刺激点から30μm以内の槍型終末を包むグリア細胞の薄板突起に限局したCa^<2+>応答がみられた。これに対し、ARL67156を500μM含む緩衝液で標本を15分間前処理して同様の実験を行なったところ、Ca^<2+>信号の薄板間伝播範囲は刺激点から半径60μmに拡大し、各薄板突起に生じるCa^<2+>濃度上昇は、細胞体を経て、同じグリア細胞の別の薄板突起まで波及した。細胞外ATPaseによる細胞内細胞間信号伝播の調節は、終末グリア細胞の各薄板突起が、機能単位として、局所のプリン作動性刺激に独立して応答するのに好都合と考えられる。
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