2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17590157
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
森泉 哲次 信州大学, 医学部, 教授 (70157874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 菜奈恵 信州大学, 医学部, 助手 (90334888)
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Keywords | 哺乳 / 脳神経 / 舌下神経 / 顔面神経 / 神経損傷 / 哺乳量 / 成長 / 生存 |
Research Abstract |
哺乳期間中の発達期ラットを用いて様々な実験を行い、授乳直前の十分な排尿と適切な非授乳時間の設定により、単位時間あたりの哺乳量を正確に計測する方法を、正常動物・神経障害動物において確立した(Neuroscience Research54:154-157,2006)。 出生直後の新生児ラット(生後1日:P1)の舌下神経・顔面神経を剖出し、舌下神経本幹(XII-trunk)・内側枝(XII-med:舌を前方へ突出させる)・外側枝(XII-lat:舌を後方へ退縮させる)・顔面神経(VII)に、片側・両側の袖経損傷を与えて、哺乳量・成長・生存率への影響を調べ、以下の結果を得た。(1)両側の舌下神経切除を行ったXII-trunk・XII-med・XII-lat神経損傷ラットは、哺乳不能で、P3からP5の期間内に全例が死亡した。(2)片側の舌下神経切除の場合、損傷された神経により、結果は大きく異なった。XII-trunk・XII-med神経損傷ラットでは、哺乳障害が強く認められ、生存率は低かった(XII-trunk神経損傷群:38%;XII-med神経損傷群:24%)。生存例では、著明な体重低下が認められた。XII-lat神経損傷ラットは、哺乳可能で、高い生存率(92%)を示し、体重低下も軽度であった。(3)顔面神経切除ラットは、片側障害・両側障害ともに、哺乳可能で、軽度の体重低下が認められたが、全例生存した(生存率100%)。(4)各実験群の生存ラットにおける哺乳量は、以下のようであった。P4 Control:100%片側XII-trunk:30%片側XII-med:36%片側XII-lat:73%片側VII:88%両側VII:81%P7 Control:100%片側XII-trunk:52%片側XII-med:71%片側XII-lat:83%片側VII:89%両側Vll:83%P14 Control:100%片側XII-trunk:60%片側XII-med:72%片側XII-lat:89%片側VII:93%両側VII:77% 以上の結果より、以下の結論が得られた。(1)口輪筋・頬筋は哺乳に影響を与えるが、生存に必須ではない。(2)舌筋は哺乳に極めて重要であり、生存に必須である。とりわけ、舌の前方への運動(protrusion)が哺乳には重要である。(3)顔面神経・舌下神経の片側障害は、両側障害とほぼ同様な効果(舌下神経外側枝を除く)を及ぼしていた。哺乳には、口腔周囲筋が両側ともに正常に機能することの重要性を意味している。(4)出生直後の神経損傷により、初期に(P4:術後3日)に高度な哺乳障害を示した舌下神経損傷ラットにおいても、成長に伴い、哺乳量の著明な増加(P7:術後6日)が起こるという興味ある現象が見られた。舌の適応(母乳をうまく吸えるようになる)が起こることが強く示唆された(International Journal of Developmental Neuroscience 24:29-34,2006)。 感覚機能については、眼窩下神経・舌神経・嗅球の両側障害動物で、哺乳障害が認められた(実験継続中で、詳細は次年度に報告する)。
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