2005 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子操作マウスを用いての甲状腺C細胞の細胞分化に関する分子機構の解析
Project/Area Number |
17590174
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
亀田 芙子 北里大学, 医学部, 教授 (10032898)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 正明 北里大学, 医学部, 助手 (60276053)
新井 雄太 北里大学, 医学部, 助手 (60329026)
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Keywords | 遺伝子操作マウス / 発生・分化 / 甲状腺C細胞 / 遺伝子 / 分子機構 / 鰓後体 / Mash1 / MeuroD |
Research Abstract |
Mash1はbHLH型転写調節因子であり、自律神経系の分化に関与している。Mash1ホモ変異型(-/-)マウスでは交感神経節が欠損し、嗅上皮の神経細胞や肺・神経内分泌細胞も形成されない。また出生直後に死亡する。甲状腺C細胞はカルシトニン(CT)を分泌する内分泌細胞である。C細胞の細胞分化に関する分子機構を解析するため、Mash1-/-マウス甲状腺を野生型マウスと比較して調べた。出生直後の野生型マウスC細胞は神経細胞様の特徴を有し、CTの他にCGRP, PGP9.5, TuJ1などの神経マーカーを呈示した。また転写調節因子NeuroDを発現した。一方Mash1-/-マウスではこれらC細胞マーカーは発現せず、C細胞は完全に欠損した。電子顕微鏡による観察でも、一日令野生型マウスでは特徴的な分泌穎粒を含有するC細胞を確認できたが、Mash1-/-マウスではC細胞は存在しなかった。第4咽頭嚢由来の鰓後体が甲状腺に侵入し、C細胞へと分化することはよく知られているので、 C細胞欠損原因を解明するため、鰓後体の発生を調べた。胎生11.5日令(E11.5)で、野生型と同様にMash1-/-マウスで第4咽頭嚢から鰓後体が生じた。各種の神経堤細胞マーカーを用いて調べたが、どの遺伝子型マウスにおいても鰓後体内に神経堤細胞が侵入することはなかった。E12.5で鯉後体は大動脈弓または内頚動脈基部と接し、野生型では鰓後体内にMash1が発現したが、 Mash1-/-マウスでは発現することはなかった。E13.5で鰓後体は甲状腺内に侵入し、野生型マウスではE14.5からC細胞として甲状腺実質内に分散し始めた。この時Mash1の発現は弱くなり、変わって神経マーカーであるCGRP、somatostatin, TuJ1がC細胞に発現し始めた。胎生後期になってNeuroD続いてCTが発現した。一方Mash1-/-マウスでは甲状腺内に侵入後、鰓後体内に多くのapoptosisが出現し、退化すると考えられ、野生型で観察できたC細胞のマーカーは発現しなかった。このような結果からC細胞は内胚葉由来細胞であり、Mash1はC細胞の細胞分化に関わる重要な遺伝子であることが分かった。またNeuroDはC細胞の最終分化に関与し、CTの発現に関わると考えられた。
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