2006 Fiscal Year Annual Research Report
分岐理論に基づく心室筋自動能発生機序の解析とバイオペースメーカーシステム設計
Project/Area Number |
17590192
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
倉田 康孝 金沢医科大学, 医学部, 助教授 (00267725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芝本 利重 金沢医科大学, 医学部, 教授 (90178921)
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Keywords | ヒト心室筋細胞 / イオンチャネル / 非線形力学系モデル / コンピュータ・シミュレーション / 分岐理論 / 自動能 / 不整脈 |
Research Abstract |
本研究(平成18年度)の目的は、前年度に得られた心室筋細胞分岐構造(自動能発現・停止過程での安定性とダイナミクス)に関する解析結果を基に、ヒト心室筋由来バイオペースメーカー細胞作成のためのシステム設計を行うことであった。 まず、前年度に作成したヒト心室筋細胞モデルシステムを用いて、活動電位のパラメータ依存性分岐パターンを解析し、1)バイオペースメーカー細胞作成のための最適システム修飾方法(各種ペースメーカー電流導入の効果)、2)バイオペースメーカー細胞の構造安定性の強化における各種ペースメーカー電流導入の意義、を検証した。単一細胞でのペースメーカー発現条件の解析から、1)ヒト心室筋細胞からのペースメーカー細胞作成には内向き整流K^+チャネル電流(IK1)の抑制が不可欠であること、2)過分極活性化陽イオンチャネル電流(Ih)がIK1抑制によるペースメーカーの発現を促進すること、が明らかとなった。また、カップル細胞モデルを用いてバイオペースメーカー細胞の電気緊張性負荷に対する構造安定性を解析し、持続性内向き電流(Ist)の導入が構造安定性の強化に最も有効である(心室筋ではIh導入の効果は少ない)ことを明らかにした。さらに、洞結節細胞の分岐構造とペースメーカー機序の部位差を解析し、1)辺縁部細胞は中心部細胞に比べて過分極負荷に対する構造安定性が高いこと、2)Na^+チャネル電流(INa)が構造安定性に寄与しており、ペースメーカーの安定な歩調取りとドライブ機能の維持にはINaが不可欠であること、を明らかにした。これらの解析結果の一部は既に報告済みである(Am J Physiol Heart Circ Physiol 292:H701-H718,2007)。これらの成果は、分岐理論に基づいた構造安定なバイオペースメーカーシステムの構築並びにその最適制御法確立のための理論的基盤を与えるものである。
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