2006 Fiscal Year Annual Research Report
致死性不整脈の発症に関わるイオンチャネルの内因性メカニズムの解明
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17590194
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
長友 敏寿 産業医科大学, 大学病院, 助教授 (50258604)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 治彦 産業医科大学, 医学部, 講師 (70231967)
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Keywords | 生理学 / 循環器・高血圧 / 遺伝子 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
3型QT延長症候群(LQT3)におけるQT延長は、心筋Naチャネルの不活性化障害に起因する遅延Na電流により生じる。LQT3患者における突然死や致死性不整脈の発症は、安静時や就寝中など徐脈時に生じやすいことが疫学的研究で示されており、ペーシングにより心拍数を増加させると著明にQT時間が短縮する。しかしながら、交感神経緊張時あるいはβ受容体刺激時の遅延Na電流の変化については明らかでない。本研究では、致死性不整脈発作の原因である遅延Na電流が交感神経刺激(β-stimulant、cAMP)によりどのように修飾されるかを、Naチャネル変異遺伝子(R1623Q)を用いて検討した。ヒト心筋Naチャネルαサブユニット(hH1)の野生型および変異型(R1623Q)のcDNAをHEK293細胞へtransfectionし、発現Na電流をwhole-cell patch clamp法を用いて室温下(23℃)で測定した。cAMP 2mMを還流させると、野生型では優位な変化はなかったが、R1623Qにおいては時間依存性に遅延Na電流の増加を認めた。Non-phosphatase inhibitorであるfluorideはcAMPと同等にNaチャネルをリン酸化させることが知られているが、電極内fluoride 120mMにより、cAMPの還流なしでもR1623Qの遅延Na電流を増加させた。このfluorideの作用はprotein kinase inhibitor 20μMにより抑制された。昨年の研究で、早いペーシングを行うことでR1623Qの遅延Na電流が頻度依存性に減少することを報告した。本年度の研究においては、R1623Qにおける頻度依存性減少へのfluorideの効果を1Hz、2Hzにおいて検討した。その結果、1Hzより2Hzにおいて遅延Na電流の減少効果は強く、fluorideはその減少作用をさらに増強させた。以上のことより、fluorideのNaチャネルに対する作用は(1)遅延Na電流の増加、(2)脈拍が増加した際の遅延Na電流減少の増強効果というの相反する効果を有することが明らかとなった。総合的にどちらの作用がより顕著に現れるかを、fluorideによる遅延Na電流増強下で、頻度依存性に対するfluorideの効果を検討した。その結果、時間依存性遅延Na電流増加作用が頻度依存性減少作用に比べより優位であった。従って、R1623Qに対するβ-stimulant (fluoride)刺激はもともと証明されていた高頻度ペーシング作用をさらに増強したが、それ以上にβ-stimulant (fluoride)の直接刺激における遅延Na電流増加作用がその効果を陵駕することが明らかとなった。β-stimulantを用いることはR1623Qの患者において不利益となると考えられ、R1623Q患者の治療としては、β-blockerにペースメーカーを併用することが最善の治療法であると考えられた。
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Research Products
(2 results)