2005 Fiscal Year Annual Research Report
心臓機能の発達変化および種差に関する研究:鶏胚心筋への回帰と研究の集大成へ
Project/Area Number |
17590229
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
重信 弘毅 東邦大学, 薬学部, 教授 (50012654)
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Keywords | マウス心筋 / Na+,Ca2+-交換反応 / SEA0400 / 活動電位プラトー相 / 階段現象 / 鶏胚心筋 / BigKチャネル |
Research Abstract |
これまでマウス心筋の多くの特殊性を見出してきたが、本研究期間はある程度それらを集大成する方向で研究を進めた。Na+,Ca2+-交換反応を基盤とすることで、マウス心筋の収縮特性を説明可能な仮説を提示することができた(Naunyn-Schmiedeberg's Arch.Pharmacol.,371:526-534,2005;次頁業績参照)。この研究の進展には、これまでに極めて選択的なNa+,Ca2+-交換反応阻害薬であることを実証してきたSEA0400が大きな力を発揮した。 1.Na+,Ca2+-交換反応では3個のNa+と1個のCa2+が交換するが、マウスは活動電位持続時間が極端に短いので、この交換電流の平衡電位に基づくと、活動電位後半でCa2+を汲み出しNa+を組み込む方向に交換反応が動くと考えられる。この交換反応により差し引きの内向き流が生じ、これがマウス活動電位の特色である後期プラトー相の形成に関与していると考えられる。 2.マウス心筋の特殊な収縮特性として、他の動物の心筋とは異なり、陰性の階段現象を示すことが挙げられるが、この現象も上記の仮説で説明可能である。即ち、収縮頻度が高まるとNa+,Ca2+-交換反応を介するCa2+流出が増大する為に陰性階段現象が見られるものと考えられる。他の動物種では、活動電位プラトー相が長く、平衡電位から考えてこの時期にはNa+,Ca2+-交換反応はCa2+を組み込みNa+を汲み出す方向に動く為に、逆の陽性階段現象が見られると考えられる。 3.マウス心筋の特殊性研究の発端となった交感神経α受容体刺激による陰性変力反応が、α刺激によりNa+,Ca2+-交換反応が亢進することによるものであることを実証することが出来た。尚、今回α受容体刺激は予想に反して、収縮蛋白のCa2+感受性を増大させることを見出した。これは収縮力に対しては増大方向に働くと考えられるが、Na+,Ca2+-交換反応によるCa2+汲み出しの増加がこれを凌駕するものと考えられる。また、このCa2+感受性増大は細胞内pHの変化(アルカリ化)に起因する二次的なものであることを示唆出来たが、この研究からα刺激がNa+,H+交換反応にも影響する可能性が生まれ、次年度の研究課題となった。更には、筋小胞体(SR)でのCa2+の放出およびCa2+の取り込みにはα刺激は影響を与えないことも今回確認することが出来た。 鶏胚心筋への回帰も試み、次年度での発展につながる興味深い知見が得られた。即ち、発生初期の鶏胚心筋が大コンダクタンスK+チャネル(BigK)開口作用を有する17-βエストラジオールに高い感受性を示すことを見出した。BigKチャネルは特に血管平滑筋に発現が高いことが知られており、発生初期心筋が血管に近い性質を残しているという作業仮説が生まれた。
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[Journal Article] Cardioprotection without cardiosuppression by SEA0400, a novel inhibitor of Na+-Ca2+ exchanger, during ischemia and reperfusion in guinea-pig myocardium.2005
Author(s)
Namekata, I., Nakamura, H., Shimada, H., Tanaka, H., Shigenobu, K.
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Journal Title
Life Sciences 77
Pages: 312-324
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