2005 Fiscal Year Annual Research Report
肺高血圧症の発症・進展機構におけるエンドセリン-1の役割と性差
Project/Area Number |
17590232
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
松村 靖夫 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (40140230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高岡 昌徳 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (50140231)
浦田 秀仁 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (80211085)
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Keywords | エンドセリン / 肺性高血圧 / 低酸素 / モノクロタリン / モノクロタリンピロル / 性差 / エストラジオール / エンドセリン受容体 |
Research Abstract |
エンドセリン-1(ET-1)は高血圧や動脈硬化の発症・進展時における増悪因子の一つとして作用することがこれまでに数多く報告されている。また、低酸素状態を伴う虚血性循環器系疾患においてもET-1をターゲットとした病態治療の有効性が報告されているが、低酸素暴露がET-1産生にどのような影響を及ぼすかについては未だ一致した見解が得られていない。さらに、最近の報告によれば、転写因子hypoxia-inducible factor-1α(HIF-1α)および細胞内AMPレベル(AMP/ATP比)を調節するAMP-activated protein kinase (AMPK)が、細胞の低酸素応答時における遺伝子発現やタンパク合成の制御に重要な役割を果たしていることが明らかにされている。そこで本研究では培養血管内皮細胞に対する低酸素暴露がET-1産生にどのような影響を及ぼすかについて調べるとともに、低酸素応答時におけるET-1産生調節機構について詳細に検討した。 低酸素(O_2濃度1%以下)条件下、培養血管内皮細胞の核内HIF-1α発現量は通常酸素(O_2濃度21%)条件下と比較して顕著に増大した。また、低酸素暴露によりprepro ET-1 mRNA発現量は有意に増加したが、培地中のET-1およびbig ET-1遊離量は減少した。一方、低酸素暴露により細胞内ET-1蓄積量の有意な増大が認められたが、この増大はわずかなものであり、低酸素暴露により生じた培地中ET-1遊離量の減少に相当するものではなかった。また、低酸素再酸素化による影響について検討したところ、低酸素暴露により増加したET-1遺伝子発現は再酸素化後急速に減少したが、遊離量においては顕著な増加が認められた。さらに、ATP枯渇作用を有するantimycin Aを用いて擬似的な低酸素状態でのET-1産生応答について調べたところ、低酸素条件下と同様にHIF-1αおよびprepro ET-1 mRNA発現量の増大、ET-1遊離量の減少並びに細胞内ET-1量の蓄積が認められた。次に、低酸素暴露およびantimycin A添加時のAMPK活性化について検討したところ、いずれの場合においてもリン酸化AMPKタンパク発現の顕著な増大が確認された。そこで、AMPK活性化薬である5-aminoimidazole- 4-carboxamide-1β-riboside (AICAR)を添加し、ET-1産生に対する影響について検討を加えたところ、核内HIF-1α発現量の増加が観察され、prepro ET-1mRNA発現は有意に増加したが、ET-1遊離量に何ら変化は認められなかった。以上の結果から、低酸素暴露および細胞内ATPレベルの低下によりHIF-1αが活性化され、ET-1遺伝子発現が増強すると考えられる。さらに、本研究でみられた低酸素暴露時のET-1遊離量の減少はAMPK活性化によるタンパク合成抑制に基づく可能性が示唆された。 なお、ET-1産生におよぼすモノクロタリンピロル(MCT-P)の影響とそのしくみについては、MCT-Pの合成に予想以上の期間を費やし、実験開始が大幅に遅れたため、次年度に報告する予定である。
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Research Products
(2 results)