2006 Fiscal Year Annual Research Report
肺高血圧症の発症・進展機構におけるエンドセリン-1の役割と性差
Project/Area Number |
17590232
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
松村 靖夫 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (40140230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高岡 昌徳 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (50140231)
浦田 秀仁 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (80211085)
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Keywords | エンドセリン / 肺性高血圧 / モノクロタリン / 性差 / エストラジオール / エンドセリン受容体 |
Research Abstract |
モノクロタリン(MCT)誘発性実験的肺高血圧症の発症.進展過程において性差が存在することが報告されているが、その詳細については明らかになっていない。そこで今回、MCT誘発性肺高血圧ラットにおける性差発現のメカニズムについて調べるため、MCTを雌雄ラットに投与し比較検討を行った。また、性ホルモンの関与について調べる目的で、卵巣摘除(OVX)を行うことによりさらに検討を加えた。 8週齢のSD系雄性及び雌性ラットに対し、MCT(60 mg/kg)の皮下投与を行い、肺高血圧症を誘発させた。さらに、雌性ラットに0VXを施し、1週間の回復期間後同様の処置を行った。MCT投与4週間後に、麻酔下において右頸静脈より挿入したカテーテルを、右室へと進め、右室収縮期圧(RVSP)を測定した。また、摘出した心臓から右室(RV)および左室+中隔(LV+S)重量を測定し、右室肥大の指標としてRV/(LV+S)重量比を算出した。さらにラジオイムノアッセィ法により右室エンドセリン-1(ET-1)含量を測定するとともに、その発現の局在性については免疫組織化学的検討により行った。また、摘出した肺を用いて病理組織標本を作製し、肺血管リモデリングの評価を行った。一部の摘出肺を用いて、灌流標本を作製し、ET-1に対する血管反応性についても調べた。 MCT投与4週間後における生存率は、雄性ラットMCT処置群(male MCT)は100%であったのに対し、雌性ラットMCT処置群(femaleMCT)は77%、OVXMCT処置群(OVXMCT)では50%と低値を示した。MCT投与4週間後におけるRVSPの上昇とRV/(LV+S)の増大については、maleMCTとfemaleMCTの間に有意な差はみられなかったが、OVXMCTにおいてはfemale MCTと比較してさらなる悪化がみられた。肺動脈中膜肥厚は、雄性ラット、雌性ラット、及び0VX群共にsham群と比較して悪化傾向がみられたが、3群の間に有意な差は認められなかった。右室におけるET-1含量は、male MCT及びfemaleMCT共にsham群と比較して増加傾向がみられたが、2群の間に有意な差はみられなかった。しかし、OVXMCTではfemale MCTと比較して有意に増加していた。また局在性について調べたところ、いずれのMCT群においても右室内膜に豊富な活性が認められた。なお、摘出肺灌流標本におけるET-1および関連ペプチドに対する血管反応性については、現在進行中である。 以上、MCT誘発性肺高血圧ラットの病態において明らかな性差は認められなかったものの、卵巣摘除処置により更なる悪化がみられた。このことから、少なくとも女性ホルモンがMCT誘発性肺高血圧ラットに対してMCTの代謝経路とは無関係に保護的に作用している可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)