2005 Fiscal Year Annual Research Report
新しい生体内ガス状メッセンジャー硫化水素の疼痛情報伝達制御における役割
Project/Area Number |
17590233
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
川畑 篤史 近畿大学, 薬学部, 教授 (20177728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関口 富美子 薬学部, 講師 (90271410)
吉田 繁 , 理工学部, 教授 (60145224)
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Keywords | 硫化水素 / 痛み / ガス / メッセンジャー / 知覚神経 / カルシウムチャネル / 還元 / 炎症 |
Research Abstract |
生体内新規ガス状メッセンジャーとして機能する可能性が示唆されている硫化水素の体性痛の情報伝達における役割を検討した。 1)ラットにおけるin vivoでの侵害受容に及ぼす硫化水素関連化合物の効果について 硫化水素供与体NaHSをラットの足底内投与することにより、機械的痛覚過敏が誘起されることを見出した。この効果のメカニズムを解析するため、各種阻害薬との併用実験を行った結果、硫化水素は知覚神経末梢端に発現するT型カルシウムチャネルを還元することにより、その感受性を増大させ、痛覚過敏を誘起することが明らかとなった。また、同様にL-システインを足底内へ投与することによっても痛覚過敏が認められ、この効果は、L-システインが組織内で硫化水素合成酵素の1つであるシスタチオニン-γ-リアーゼによって硫化水素に変換されることで発現することが明らかとなった。 2)ラット脊髄Fos発現に及ぼす硫化水素関連化合物の効果について 硫化水素供与体NaHSを足底内投与すると、2時間後、脊髄後角表層にFos蛋白の発現が認められた。 3)エンドトキシン足底内投与により誘起されるラットの痛覚過敏に及ぼすシスタチオニン-γ-リアーゼ阻害薬の効果 ラットの足底内へエンドトキシンを投与することにより誘起される機械的痛覚過敏は、シスタチオニン-γ-リアーゼ阻害薬の前投与により部分的に阻害された。またこの阻害効果は、NaHSの足底内投与により消失した。一方、足底組織中のシスタチオニン-γ-リアーゼの蛋白発現量はエンドトキシン投与による影響をうけなかった。 本年度の研究により、外来性に与えた硫化水素およびシスタチオニン-γ-リアーゼによりL-システインから内因性に生成される硫化水素は、その還元作用によりT型カルシウムチャネルの感受性を増大させ、痛覚過敏を誘起することが明らかとなった。また硫化水素は特に炎症性痛覚過敏の発症に密接に関与すると考えられる。今後さらに、神経因性疼痛など、各種疾患との関連性についてもさらに検討を進めていく予定である。
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