2005 Fiscal Year Annual Research Report
Hypoxia Inducible Factorによる細胞接着の誘導機構の解明
Project/Area Number |
17590258
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
神奈木 玲児 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 部長 (80161389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 修 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 室長 (00142167)
京ケ島 守 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 主任研究員 (50225091)
金森 審子 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 主任研究員 (00261173)
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Keywords | 低酸素誘導因子 / 転写調節 / シアル酸 / 糖トランスポーター / シアル酸転移酵素 / 遺伝子導入 / 細胞接着糖鎖 / ガングリオシド |
Research Abstract |
細胞接着は多くの疾患の病態生理に深く関連している。最近我々は低酸素(hypoxia)によって細胞接着が強く促進されることを見いだした。とくにセレクチンを介した細胞接着とフィブロネクチンへの接着の強い誘導が観察された。この低酸素による細胞接着の亢進の分子生物学的メカニズムを知るために低酸素および正常酸素下での遺伝子発現の変化を検索したところ、これまでにFUT7、ST3O、UGT1、ITGA5およびSDC4遺伝子の転写の誘導を観察している。本研究は、以上のようなこれまでの基盤の上に立ち、転写因子hypoxia inducible factorによる細胞接着誘導の分子生物学的メカニズムの解明をさらに進めることにある。多くの細胞接着糖鎖が末端にシアル酸を含有することから、本年度は低酸素のシアル酸代謝に及ぼす影響に焦点を合わせて検索した。その結果、低酸素状態におかれた細胞では、シアル酸が増量し、シアル酸の関与する細胞接着系が亢進することが判明した。その背景には、低酸素によるシアル酸輸送体(トランスポーター)遺伝子の発現誘導があり、さらにこれに加えて、以前に明らかにしたシアル酸転移酵素ST3O以外のシアル酸転移酵素遺伝子の発現も誘導されることが判明した。従来、細胞内のシアル酸含有糖鎖の合成に必要なシアル酸の供給は、主としてde novoの生合成によると考えられてきたが、今回の結果は、特定の組織・器官によっては、de novoの合成のみならず、シアル酸輸送体の活性の変化が、シアル酸含有糖鎖の合成発現に大きな影響を与えることが明らかとなった。細胞へのシアル酸輸送体遺伝子の強制導入・発現により、低酸素の作用とほぼ同等の効果が観察された。その影響はシアル酸を含有する糖蛋白質糖鎖のみならず、ガングリオシドなど糖脂質にも及んでおり、組織・器官によって増量するシアル酸含有糖鎖に特徴がある。本年度はこれらの成績の一部、とくに低酸素によるシアル酸輸送体遺伝子の発現誘導とそれによる細胞表層糖鎖の発現変化との関連性を解明し報告した(Caneer Res.,66:2937-2945,2006)。
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