2006 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外分泌ephrinの、癌と神経組織における作用の解析
Project/Area Number |
17590282
|
Research Institution | National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East |
Principal Investigator |
田中 正光 国立がんセンター(研究所及び東病院臨床開発センター), 細胞増殖因子研究部, 室長 (20291396)
|
Keywords | 癌 / 細胞、組織 / シグナル伝達 / ephrin |
Research Abstract |
受容体型チロシンキナーゼであるEphファミリーと対応リガンドであるephrinは、様々なヒト癌組織や神経組織で発現しており、特にephrin-Bは浸潤性の高い癌で発現量が高い傾向がある。Eph受容体とephrinは構造的にどちらも細胞膜に固定されているが、我々の検索でヒト膵臓癌の細胞株のなかには、切断されることによりephrin-B1の細胞外領域がその培養上清中に分泌されているものが存在していた。このephrin-B1の細胞外領域の切断は、対応するEphB受容体により刺激を受けることで著明に増強された。そのメカニズムを検索した結果、ephrin-B1の新しい機能として、Eph受容体による刺激に伴ってephrin-B1のC末を介した信号経路によりArf1の活性化が誘導され、それに基づいたメタロプロテアーゼ(MMP)の細胞外輸送の促進の結果、ephrin-B1自身の切断が増強される分子機序が解明された。これまで浸潤型癌でephrin-Bの発現量が高い意義は不明であったが、そのひとつとしてephrin-B1の信号経路がMMPの分泌、活性化を制御することにより、細胞外基質分解が促進され、ephrin-B1発現癌細胞の組織浸潤が促進されている機構が考察された。例えば組織浸潤性の弱いPanc1膵癌細胞にephrin-B1を強制発現させると、同癌細胞のヌードマウスにおける腹膜播種が明瞭に亢進され、一方もともと組織浸潤性の高い胃癌細胞にephrin-B1の優勢抑制型変異体を導入すると、その腹膜播種は阻害された。やはり高浸潤型の特徴を持つ神経膠芽腫でもephrin-B1や対応するEphB受容体の高い発現がみられ、ephrin-B1はあるタイプの癌の浸潤性を阻止するうえで、有効な標的分子になりうると考えられた。
|
Research Products
(2 results)