2005 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト肺腺がんの発がん初期に異常メチル化を示す発がん関連遺伝子の探索
Project/Area Number |
17590292
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
飯嶋 達生 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (40222799)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 雅之 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (00198582)
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Keywords | 肺腺がん / 発がん / メチル化 / ACIN1 / MCA / CpG island / AAH |
Research Abstract |
17年度の研究では以下のことを行い、英文誌(Journal of Thoracic Oncology2006)に受理された。 1)肺腺がんの前がん病変である異型腺腫様過形成(Atypical adenomatous hyperplasia)の腫瘍細胞から我々が樹立した培養細胞株(PL16T)および同一患者の末梢気管支上皮細胞から樹立した培養細胞株(PL16B)に対して、Methylated CpG island amplification法およびSuppressive subtraction hybridazation法を行い、PL16Tにのみメチル化がある2134個のDNA断片コロニーを作成し、塩基配列解析から29個の遺伝子を同定した。この29個の遺伝子のうち15個の遺伝子のDNA断片はCpG islandであったが、全てエクソンまたはイントロンの領域で、プロモーターは含まれていなかった。 2)29個の遺伝子のうちアポトーシスに関連する遺伝子Apoptotic chromatin condensation inducer1(ACIN1)について直径2cm以下の初期ヒト肺腺がん手術症例37例を用いて臨床病理学的検討を行った。肺腺がんのがん部と非がん部のそれぞれから抽出したDNAを用いて、研究1)で見いだしたACIN1遺伝子メチル化領域のメチル化状態をbisulfite-sequencing法により検討した。37例中、がん部では30例(81%)にメチル化が見られたが、非がん部のメチル化は9例(24%)で、がん部と非がん部の間に有意差が認められた(p<0.01)。また肺胞上皮置換性増殖を示す肺腺がん症例(21例)と示さない症例(16例)では、非がん部のACIN1のメチル化状態は異なり、肺胞上皮置換性増殖を示す症例では2例(10%)で、肺胞上皮置換性増殖を示さない症例では7例(44%)でメチル化が認められ、両者の間に有意差があった(p<0.05)。 以上本年度の研究では、見いだされた異常メチル化DNA断片にプロモーター領域はなく、29個の遺伝子は肺腺がんの発がんに直接関係するものとは考えられなかった。しかし検出された遺伝子の1つACIN1は肺腺がんで高率にメチル化されていることが明らかとなり、肺腺がん早期診断への応用の可能性が示された。また肺胞上皮置換性、非置換性肺腺がんの非がん部でのACIN1メチル化頻度の相違は組織型の相違による発がん過程の差異を示唆している可能性もあり、興味深い結果と考えられた。
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Research Products
(1 results)