2006 Fiscal Year Annual Research Report
肺癌進展に関わる癌細胞・宿主相互応答遺伝子発現解析パネルの開発と応用
Project/Area Number |
17590320
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
上田 善道 金沢医科大学, 医学部, 教授 (50271375)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐川 元保 金沢医科大学, 医学部, 教授 (70292274)
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Keywords | 肺癌 / 侵襲性 / 遺伝子発現プロファイリング / 血管新生 / 微小乳頭状腺癌 / 上皮内腺癌vs浸潤性腺癌 / γ-catenin (plakoglobin) / HDAC-1 |
Research Abstract |
がん浸潤前線における微小環境ががんの増殖・進展に関わる遺伝子群の発現制御において重要な役割を果たす。肺癌浸潤部微小環境における癌細胞・宿主細胞相互応答に関わる遺伝子群の解明と臨床応用可能な発現解析法の確立を目的として研究を行い、以下の結果を得た。 1.Laser-captured microdissection (LCM)法を用いた微小検体でのClonetech社製cDNAマクロアレイでの遺伝子プロファイリング解析法を確立した。しかし、再現性に優れ、かつ、他施設での研究データとのインターネットを通じた互換可能な観点からAffymetrix社製DNAマイクロアレイへの応用が必要となった。このためには、確立したmRNA増幅では不充分であり、より適切な増幅法に関し現在も検討中である。 2.肺腺癌の侵襲性判定パネル構築のため新たな遺伝子群を、1)腫瘍血管増生、2)微小乳頭構造の有無(新たな予後不良因子として近年提唱された)、3)上皮内腺癌と浸潤性腺癌での差異に注目し検討した。 3.1)より、CD105で標識される新生血管数、VEGF 121、Ang-2、HIF 1α、HIF 2α遺伝子発現と肺腺癌の浸潤性増殖ならびに予後との間に有意な関連性が示された。 4.2)では、DNAマイクロアレイ解析により微小乳頭状腺癌は通常乳頭状腺癌とは明らかに異なるクラスターを形成した。CXCL14遺伝子発現低下とS100P遺伝子発現亢進が微小乳頭状腺癌形成に関わることが示された。 5.3)の上皮内腺癌と浸潤性腺癌におけるDNAマイクロアレイ解析により、後者ではHDAc 1、Twist 1、CEACAM 1遺伝子が、前者ではMMP-28、VEGF-D遺伝子が有意に発現亢進していることが明らかになった。 6.前年度の研究から明らかになったMMP-14、MMP-3、p21-rac1、Notch-4/Jagged-1,-2、c-fos related antigen、ezrin、MIC-1の9遺伝子に加え、今回新たに選別された11遺伝子を加えた20遺伝子を用い肺腺癌侵襲性診断パネルを構築し、LCM法を応用した肺腺癌浸潤部でのこれら遺伝子発現パターンの検討を現在進行中である。 7.がん細胞・宿主細胞応答遺伝子のより直接的な選別のためHT1080細胞のヌードマウスへのorthotopicとheterotopic inoculationによる遺伝子発現プロファイリングを解析した。γ-catenin (plakoglobin)遺伝子発現低下がorthotopic inoculationでのがん細胞増殖・浸潤に関わっていることが明らかとなると共に、周囲間質からの炎症性サイトカインを介したがん細胞におけるHDAC遺伝子発現亢進を介したepigeneticな遺伝子発現制御が関わっている可能性が強く推測された。臨床例を用いた解析からγ-catenin (plakoglobin)遺伝子は新たな腫瘍抑制遺伝子であることが明らかとなった。
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