2005 Fiscal Year Annual Research Report
ユーイング肉腫/PNETにおけるFISH解析によるEWSR1遺伝子変異の同定
Project/Area Number |
17590327
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
長谷川 匡 札幌医科大学, 医学部, 教授 (40281167)
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Keywords | 病理学 / 融合遺伝子 / 細胞・組織 / ユーイング肉腫 / 小円形細胞腫瘍 / FISH / EWSR1 |
Research Abstract |
病理形態学的な鑑別が難しいEWSR1変異(転座)が共通するユーイング肉腫およびその他の小円形細胞腫瘍の病理診断のために、EWSR1 DNAプローブを用いて16例のユーイング肉腫、6例の線維形成性小円形細胞腫瘍、6例の淡明細胞肉腫および各3例ずつの胞巣型横紋筋肉腫、低分化滑膜肉腫、神経芽腫のホルマリン固定パラフィン組織切片で間期核を対象としたFISH解析を行った。染色体22q12領域に存在するEWSR1遺伝子に対するEWSR1二色分離プローブは、EWSR1遺伝子の5'側からイントロン4まで約500kbをオレンジで標識したプローブと、EWSR1遺伝子の3'側約1100kbをグリーンで標識したプローブの二つのDNAプローブからなる。二つのプローブの間には7kbのギャップがあり、この中のイントロン7から10までにEWSR1遺伝子の転座の切断点が含まれている。したがって、転座(遺伝子変異)のない細胞ではオレンジとグリーンの二色のシグナルが融合した状態で観察されるが、EWSR1遺伝子を巻き込んでキメラ遺伝子が形成される腫瘍細胞では、一つのEWS遺伝子に転座が生じた結果オレンジとグリーンの二色が分離したシグナルパターンが認められる。FISH解析の結果、ユーイング肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、淡明細胞肉腫の小円形細胞腫瘍群ではEWS遺伝子変異の検出率は90%と高感度であった。その他の腫瘍群にはEWSの異常はなく、FISH解析の特異度は100%であった。このFISH解析の利点と問題点として、EWS遺伝子変異を共通するユーイング肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍および淡明細胞肉腫の診断上価値が高い。その際、転座のパートナー遺伝子までは同定できないが、一つのプローブでバリアント融合遺伝子を含めてEWS変異を同定できるメリットがある。ただし、標本の固定状態は結果に大きな影響を及ぼし、脱灰標本ではFISHシグナルの検出が難しい。したがって、実際の診断に際しては、特に診断が困難な症例では、RT-PCR法と併せた遺伝子診断の多面的アプローチが必要である。
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Research Products
(23 results)