2007 Fiscal Year Annual Research Report
レトロウイルスによって増強されるアポトーシス機構の解明と遺伝子治療への応用
Project/Area Number |
17590337
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
北川 昌伸 Tokyo Medical and Dental University, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (10177834)
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Keywords | レトロウイルス / DNA損傷 / アポトーシス / p53 / DNA-PK |
Research Abstract |
我々はC3Hマウスにおいてレトロウイルスの一つであるフレンド白血病ウイルス(FLV)の感染が放射線誘発p53依存性アポトーシスを著明に増強する実験系を見出した。FLVに感染したC3Hマウスに低線量の放射線を全身照射すると、マウスは照射後2週間で著明な貧血を起こして死亡し、骨髄造血細胞には高頻度のアポトーシスが観察される。遺伝子改変動物を用いた実験からFLV感染下で起こるこのp53依存性アポトーシスの増強にはDNA-PKとATMが関与していることがわかった。これらのPI3キナーゼのうち特にDNA-PKが、ウイルスのgp70と関連したp53の活性化に重要な意味を持っている。今年度は昨年度に続いてin vitroの造血系細胞株で、この現象の解析をさらに進めた。細胞株としてはC3Hマウス由来の放射線誘発骨髄性白血病細胞株を用いた。昨年度および今年度の成果からウイルスの遺伝子のうちgp70のみを導入することによって、放射線誘発アポトーシスが増強されること、またdoxorubicinのような薬剤によって誘導したアポトーシスも増強されることがわかっている。そこで、RNAiを用いて特異的にDNA-PKあるいはATMの活性を阻害する実験系の作成を試みた。その結果、今年度はRNAiによるDNA-PK発現のノックダウンの系を作製することができた。上記の放射線あるいは薬剤によるアポトーシスのgp70による増強効果はノックダウン実験によってDNA-PK特異的に発現を抑制すると阻害されることが明らかとなった。さらに質量分析の手法を用いて、C3Hマウス特異的なこの現象の責任分子の同定のための準備実験を開始している。
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