2005 Fiscal Year Annual Research Report
サイトカインシグナル伝達を基盤にした敗血症時の生体防御機構の解明
Project/Area Number |
17590352
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松川 昭博 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (90264283)
|
Keywords | 敗血症 / 自然免疫 / 全身性炎症症候群 / シグナル伝達 / サイトカイン / ケモカイン |
Research Abstract |
これまで我々は、マウス敗血性腹膜炎モデルを用いて、STAT因子による自然免疫の調節機構を解析してきた。STAT因子を介したサイトカインのシグナル伝達はSOCS因子によって制御される。そこで、今年度は、SOCS5の敗血症時の役割を解析すべく、T細胞特異的なSOCS5トランスジェニックマウス(SOCS5TG)および野生型マウス(WT)に敗血症を誘導し、その後の腹腔内、血中、諸臓器での免疫応答を比較観察した。その結果、WTに比べSOCS5TGでは腹腔内滲出細胞数の増加、細菌クリアランスの亢進を認めた。腹腔内の炎症性サイトカイン・ケモカイン産生もSOCS5TGで高値を示した。一方、全身性炎症の指標である急性期タンパクの増加や、腎障害のマーカーである尿素窒素、クレアチニン値はSOCS5TGで有意に低く、臓器内のサイトカイン及びケモカイン産生も低下していた。敗血症後のマウス生存率は、SOCS5TGで有意に改善した。次に、SOCS5TGおよびWTマウス脾細胞よりCD4T細胞を精製し、これをWTマウスあるいはRag2マウスの腹腔内に移入したマウスに敗血症モデルを誘導し、その後の免疫応答を観察した。その結果、SOCS5TG-CD4T細胞の移入を受けたマウスはWT-CD4T細胞移入群にくらべ、有意な腹腔内炎症細胞数の増加、細菌クリアランスの上昇が観察された。以上より、T細胞特異的SOCS5TGでは局所の自然免疫応答が細菌排除に有効なTh1応答にシフトし、そのため細菌排除が促進されて炎症が全身に波及せず、マウスは敗血症に対し抵抗性を示した、と考えられた。この結果は、T細胞が自然免疫応答発現に強く関与していることを示唆しており、免疫応答の発生上からも非常に興味深い知見といえる。
|