2006 Fiscal Year Annual Research Report
サイトカインシグナル伝達を基盤にした敗血症時の生体防御機構の解明
Project/Area Number |
17590352
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松川 昭博 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (90264283)
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Keywords | 敗血症 / 自然免疫 / 全身性炎症症候群 / シグナル伝達 / サイトカイン / ケモカイン |
Research Abstract |
これまで我々は,マウス敗血性腹膜炎モデルを用いてSTAT-SOCS因子による白然免疫の調節機構を解析してきた。平成17年度はT細胞特異的なSOCS5トランスジェニックマウス(SOCS5Tg)を用いた検討から,T細胞SOCS5高発現により局所の自然免疫応答が細菌排除に有効なThl応答にシフトし細菌排除が促進されてマウスは敗血症に対し抵抗性を示すことを見いだした。平成18年度は,T細胞特異的なSOCS3トランスジェニックマウス(SOCS3Tg)を用いて,T細胞SOCS3の敗血症時の役割を解析した。その結果,SOCS3Tgは野生型(WT)に較べ同様に敗血症抵抗性であった。SOCS3Tgマウスの局所及び末梢血中の細菌保有量は同程度であったが,興味深いことにSOCS3Tgでは敗血症に伴う腎傷害が有意に改善された。この時,腎でのTh1サイトカインは減少し,STAT4活性化は低下していた。この結果から,T細胞SOCS3高発現により腎でのSTAT4シグナルの抑制,それによる臓器傷害性Th 1サイトカインの減少により腎傷害が回避されてマウスは敗血症抵抗性を獲得したと考えた。一方,STAT3欠損マクロファージでのFcγR・CR1の発現は低下し(cDNAアレイ,FACS), SOCS3欠損マクロファージでのこれらの発現は亢進していた。蛍光標識大腸菌の食細胞への取り込みはSTAT3欠損マクロファージで低下し, SOCS3欠損マクロファージで亢進していた。現在,この変化が実際の炎症モデルにどう関与するかを敗血症モデル等により検討中である。また,食細胞特異的STAT3欠損マウスにおける獲得免疫反応はTh 1・Th2型とも有意に軽減することを見いだした。このメカニズムとして,同マウスの抗原提示細胞によるMHC class II発現の低下により,免疫反応形成に関わるTh1・Th2サイトカイン産生の低下によることを明らかにした。
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