2005 Fiscal Year Annual Research Report
生体内におけるバーシカンの機能:ノックインマウスを用いた研究
Project/Area Number |
17590361
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
渡辺 秀人 愛知医科大学, 分子医科学研究所, 助教授 (90240514)
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Keywords | バーシカン / PG-M / プロテオグリカン / 細胞外マトリックス / コラーゲン線維 / TGFbeta |
Research Abstract |
バーシカンは発生期の心臓、軟骨原基等に一過性に高発現して遊走、接着、分化、増殖等の細胞挙動を制御する。一方、成獣においては心血管系、皮膚、脳等のマトリックスの構成成分として安定的に発現している。バーシカンの遺伝子欠損マウスはジーントラップ法によってすでに作製されているが同マウスは胎生10.5日に心形成不全によって死亡するため、心形成後期あるいは心臓以外の臓器における同分子の機能は解明されていない。 本研究では、N-末端G1ドメイン内のAサブドメインを欠失するバーシカンのノックインマウスを作製しその解析を行った。ヘテロ接合体は異常を示さず正常に繁殖したが、ホモ接合体は胎生18.5日までに全例死亡した。生化学的機能解析から、同変異バーシカンはヒアルロン酸との結合能の低下を示しマトリックスへの沈着が低下すると推測されるが、事実、同ホモ接合体においてバーシカンの沈着は低下していた。同マウスの心臓は拡大し、心室壁の菲薄化を伴う線維化および心筋細胞分化の遅延が観察された。大動脈壁は形成不全を呈し動脈平滑筋細胞の分化も遅延していた。皮膚では真皮膠原繊維幅の低下が認められた。胎生期線維芽細胞培養系を用いて、これらの表現型の発症機構を検討したところ、バーシカンがコラーゲン線維の形成と十分な沈着に必要なこと、また、フィブリリン1と結合してLatency-associated peptide(LAP)-TGFβ複合体を細胞外マトリックスに沈着させ、同成長因子のシグナル伝達調節を通じて細胞分化を制御していることが明らかとなった。 これらの研究結果はバーシカンがマトリックス形成の中心的役割を果たしていること、および同分子がTGFβの機能を細胞外マトリックスにおいて制御していることを示している(論文投稿中)。
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