2006 Fiscal Year Annual Research Report
旋毛虫感染による宿主筋肉細胞変異の遺伝子発現動態の解析とその分子機構の解明
Project/Area Number |
17590370
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
呉 志良 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 助手 (90313874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長野 功 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 助教授 (40283296)
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Keywords | Trichinella spiralis / Trichinella pseudospiralis / cDNA Microarray / satellite cell / differentiation / proliferation / tansformation |
Research Abstract |
前年度においてはT.spiralisおよびT.pseudospiralis感染筋肉における遺伝子発現変動をcDNA Microarrayによって解析した。今年度はその結果に基づいて、細胞成長、分化、増殖、変異、細胞周期制御およびアポトーシスに関連する遺伝子に注目し、それら遺伝子の旋毛虫の感染過程における発現動態を検討した。また、遺伝子機能との関連性を検討し、感染病態に関与する遺伝子およびシグナル経路を解析した。 1)satellite細胞の活性化や増殖を示す遺伝子Pax7、Msx1およびM-cadherinはT.spiralisおよびT.pseudospiralis感染において発現量が増加した。しかし、T.spiralis感染ではPax7とMsx1の発現レベルは感染後48日目(ナース細胞形成後)には低下したが、T.pseudospiralis感染では感染48日目にはさらに上昇した。また、M-cadherinの発現レベルはT.spiralis感染においては変化が見られなかったが、T.pseudospiralis感染では上昇した。この結果はこれら遺伝子が感染筋肉細胞のsatellite細胞の活性化や増殖に関与すること、および旋毛虫種における異なる発現動態が旋毛虫種の異なる病理変化と関連があることを示唆している。 2)Notchシグナル経路の調節因子NumbおよびDeltex1の発現量はT.spiralisおよびT.pseudospiralis感染ともに増加した。T.spiralis感染においては感染後発現レベルが上がり、48日目には低下した。T.pseudospiralis感染においては感染後に上がった発現レベルは48日目にさらに上昇した。Notchシグナル経路は筋肉発生、発育、分化および再生を制御する重要な経路である。この結果はこれら両因子がNotchシグナル経路の調節因子として感染筋肉細胞の分化、変異などを調節していることを示している。 3)Galectin 1、Gelectin 3およびATBF1の発現はT.spiralisおよびT.pseudospiralis感染ともに増加した。T.spirali5感染では発現量が感染後23日目にはピークとなり、その後低下した。一方、T.pseudospiralis感染では発現量は感染日数に伴って増加し、感染後48日目には最高値を示した。これらの遺伝子は感染筋肉細胞の再分化におけるMyogenesisに関与すると考えられる。 4)Cyclin A2、Granulin、Nuclear Protein 1、Sparc、Pax3、Chordin2およびEndoglinの発現レベルはT.spiralis感染で高くなったが、T.pseudospiralis感染においては変化が見られなかった。このようにT.spiralisに特異的に発現変化があった遺伝子群はT.spiralis感染筋肉細胞に起こる細胞周期Re-entryおよび細胞周期.Arrest(CyclinA2、Granulin、Nuclear Protein 1)、ナース細胞への分化および変異(Sparc, Pax3、Chordin2)、およびナース細胞形成時に起こるAngiogenesisに関与していると考えられる。 以上の結果は多数の遺伝子やシグナル経路が旋毛虫感染におけるナース細胞の形成および病理変化に関与すること、および旋毛虫種による異なる発現動態が旋毛虫種の異なる病理変化と関連があることを示している。本研究は旋毛虫感染の分子メカニズムの解明に貢献するものと考える。
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