2005 Fiscal Year Annual Research Report
トリパノソーマ類の寄生成立の初期条件:嫌気的ピリミジン生合成能の獲得
Project/Area Number |
17590377
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
奈良 武司 順天堂大学, 医学部, 講師 (40276473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
案浦 健 順天堂大学, 医学部, 助手 (90407239)
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Keywords | トリパノソーマ / 寄生適応 / ピリミジン生合成 / 分子進化 / 遺伝子水平転移 |
Research Abstract |
本年度は、遺伝子水平転移によって獲得され、原虫の低酸素適応に寄与したと考えられるピリミジン生合成経路第4酵素dihydroorotate dehydrogenase (DHOD)の生理機能と遺伝子多型について、Trypanosoma cruzi Tulahuen株のDHOD遺伝子3ローカスを全てクローニングし、遺伝子多型を調べた。その結果、DHOD遺伝子のORF(942塩基対)中に、26箇所という高頻度の塩基置換が認められた。これらの塩基置換が酵素性状に影響するのかどうかを調べるために、DHOD遺伝子3ローカスについてそれぞれ組換え体酵素を作製し、その酵素活性を解析したところ、酵素学的性状は極めて似通っており、少なくともTulahuen株においてはDHOD遺伝子の塩基置換は酵素性状に影響を与えないことが明らかとなった(Sariego, et al., Parasitol.Int, 2006)。この成果は、DHODを標的とした治療薬開発に重要な知見を与えると考える。 ピリミジン生合成経路の第5酵素orotate phosphoribosyltransferase (OPRT)と第6酵素orotidine-5'-monophosphate decarboxylase (OMPDC)は、トリパノソーマ類では特異オルガネラであるグリコソームに局在する。興味深いことに、両酵素遺伝子は動物や植物の持つOPRT/OMPDC融合遺伝子とは逆の順に融合し(OMPDC/OPRT融合)、さらに同原虫類のOMPDCドメインは遺伝子水平転移によって獲得されたと推定される。本年度に行なった遺伝子クローニングの結果、ボド類はOMPDC/OPRT融合遺伝子を、ユーグレナ類はOPRT/OMPDC融合遺伝子を持つことが明らかとなった。グリコソームの存在はトリパノソーマ類とボド類を含むキネトプラスチダ類でのみ認められており、本研究はOMPDC/OPRT融合遺伝子の成立とグリコソーム成立が進化上ほぼ同時に起きたイベントであることが示唆された(論文投稿中)。
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Research Products
(2 results)