2006 Fiscal Year Annual Research Report
マクロファージ内感染後の結核菌による宿主防御免疫発現制御の分子機構
Project/Area Number |
17590389
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河村 伊久雄 京都大学, 医学研究科, 助教授 (20214695)
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Keywords | 結核菌 / マクロファージ / ネクローシス / カスパーゼ9 / Mce1A / RD1 / 肺胞上皮細胞 / ケモカイン |
Research Abstract |
病原性の強い結核H37Rvは感染マクロファージにnecrosisを誘導する能力が高いが、感染初期にはcaspase-9の活性化を誘導して一時的にnecrosisを抑制し、細胞内で増殖する。その後necrosisを誘導することで菌は細胞外に放出され、感染が拡大するものと考えられる。H37Rv感染後のcaspase-9活性化には細胞内活性酸素の産生が必要となる。しかし、病原性の弱いH37Raの感染では活性酸素の産生が認められず、caspase-9の活性化も誘導されなかった。この結果から、結核菌の病原性に関与する因子が、細胞内活性酸素の濃度を上昇させ、caspase-9の活性化を誘導することが示された。結核菌ゲノム上のRD1は菌の病原性に関与する重要な領域であることが示されている。しかし、マクロファージにRD1欠損株を感染させた場合にもcaspase-9の活性化が誘導されたことから、この領域はcaspase-9の活性化には関与しないことが明らかとなった。一方、RD1欠損株はnecrosis誘導能が著明に低下していることが示され、この領域に存在する遺伝子が結核菌感染後のnecrosis誘導に関与することが示された。 GFPを発現するBCGを用いて、感染後の脾臓中の菌の局在を調べたところ、防御免疫が発現している感染4週後では、菌は樹状細胞よりもマクロファージ内に多く存在する傾向が認められた。この結果から、マクロファージに侵入したBCGが選択的に宿主体内で生存し続けるメカニズムが存在する可能性が示された。 結核菌は感染後、貧食能のない上皮細胞に侵入することができる。一方、上皮細胞は感染に伴いケモカインを産生して、免疫担当細胞を感染局所に動員することで初期防御に関与する。結核菌の上皮細胞への侵入にはMce1Aが重要な役割を果たすが、Mce1Aはそのケモカイン産生を刺激しないことが示された。これは、結核菌が宿主防御反応を回避して細胞内に侵入するための重要な機序であると考えられる。
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Research Products
(6 results)