2005 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクターピロリの感染定着におけるクオラムセンシング機構の役割解析
Project/Area Number |
17590399
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
大崎 敬子 杏林大学, 医学部, 助手 (90255406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神谷 茂 杏林大学, 医学部, 教授 (10177587)
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Keywords | ヘリコバクターピロリ / クオラムセンシング / オートインデューサー2 / 運動性 / 鞭毛 |
Research Abstract |
クオラムセンシング機構(QS)とは細菌がオートインデューサー(AI)と呼ばれる物質を介して自己に情報伝達するシステムである。Helicobacter pyloriにはLuxSによって産生されるAI-2を介したQSが存在することがすでに報告されている。しかし、本菌の役割については知見が不十分で、特に持続感染におけるQSの役割について明らかにすることを目的とした。luxS変異株を作成し、スナネズミ感染実験モデルで変異株と野生株を比較した結果、感染性が低下していることが示された。持続感染の成立にとって必須と考えられている性状の中から菌の運動性、上皮細胞への付着性、酸耐性、マクロファージ内の生存について調べた結果では、野生株と比べて変異株の運動性が低下していることが示された。また、クオラムセンシング機構によって発現制御される遺伝子を検索するため、DNAマイクロアレイ法により全遺伝子の網羅的解析を行った結果では、対数増殖期にある変異株の遺伝子は野生株と比較して発現が0.6倍以下に低下していた遺伝子が12種あり、逆に1.5倍以上に発現の亢進が認められた遺伝子が65種類あった。しかしながら、いずれの遺伝子においても3倍以上の発現の差は認めていなかった。運動性に関わる遺伝子群においては、変異株は野生株と比較して発現の亢進が認められる遺伝子が8種検出され、そのなかにはflagellinをコードするflaA,flaB遺伝子の他flagella hock proteinとその関連遺伝子であるfliD, flgEなどが含まれていた。培養時期ごと遺伝子の発現を比較するために行ったリアルタイムPCRによる解析の結果では、flaA,flaB遺伝子が対数増殖期と比べて定常期に低下している結果を得た。しかしながら、電子顕微鏡による観察では培養48時間においても、鞭毛が認められており、野生株と変異株の鞭毛形成に差は認められなかったため、変異株における運動性の低下のメカニズムの解明には、さらに詳細な解析が必要と考える。
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Research Products
(2 results)