2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトCRM1遺伝子導入ラットを用いたHTLV-I感染モデルの樹立
Project/Area Number |
17590411
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
大橋 貴 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教授 (10282774)
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Keywords | HTLV-I / ATL / Animal model / CRM1 / Transgenic rat / Tax |
Research Abstract |
ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-I)は、成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスであることが知られているが、生体内での腫瘍化機序の詳細は依然として完全には解明されていない。本研究では、HTLV-IによるATL発症機序の解析のためのモデルとして、HTLV-Iの複製に重要な因子であるヒトCRM1トランスジェニックラット(Tgラット)を作製し、Tgラット由来T細胞内でのHTLV-I複製を検証した。はじめにTgラットの胸腺、および脾臓からHTLV-I感染T細胞株を樹立し、そのp19Gag抗原産生量を野生型ラット由来細胞と比較したところ、Tgラット由来細胞のGag産生は10〜1000倍亢進していることが確認された。両細胞間でTaxおよびRexの発現量に有意な差は認められなかったことから、p19産生亢進にHTLV-Iの調節蛋白の発現増強は関与していないものと考えられた。また、両細胞間で細胞増殖速度に関しても有意な差は認められなかったことから、感染細胞数の増加がp19産生亢進の原因である可能性も否定された。次に,Tgラットに対してHTLV-Iを接種し,生体内での増殖を野生型ラットと比較したところ、いくつかの検査項目では両者間の顕著な差は確認できなかったが,Tgラットの方が生体内でのウイルスの伝播が亢進していることが示された。以上の結果から、ヒトCRM1Tgラットにおいては、HTLV-Iの標的細胞であるT細胞、および感染個体内でのウイルス複製が増強されていることが確認され、本TgラットがHTLV-I感染モデル動物として有用であることが示された。
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