2006 Fiscal Year Annual Research Report
HLA抗原提示系の動態がT細胞の抗ウイルス機能に与える影響の解明
Project/Area Number |
17590419
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
上野 貴将 熊本大学, エイズ学研究センター, 講師 (10322314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
滝口 雅文 熊本大学, エイズ学研究センター, 教授 (00183450)
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Keywords | 抗原 / T細胞 / 抗ウイルス機能 / HIV / AIDS |
Research Abstract |
本研究では、HLA抗原提示系がウイルス疾患制御に積極的に関わる役割と、そのシステムにウイルス因子が及ぼす影響の解明を目指した。ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)Nefに対するHLA-B35拘束性のヒト細胞傷害性T細胞(CTL)応答をモデルとして、抗原の性質とCTLの抗ウイルス活性を解析した。HLA-B35は内部にプロリンを含む抗原ペプチドを好むため、Nef中央付近のプロリン反復配列はHLA-B35に多くの抗原を提供する。急性および慢性感染者サンプルを用いた再検索の結果、RY11(RPQVPLRPMTY)とN末端から3アミノ酸が欠落したVY8(VPLRPMTY)ペプチドが主要なCTL応答を構成していた。HLAテトラマーを作製して末梢リンパ球を解析したところ、早期感染者ではVY8がCTLの主要なターゲットであったが、慢性感染者ではRY11特異的CTLが多くを占めていた。それぞれ4人の患者リンパ球から10個のCTLクローンを樹立してウイルス感染細胞に対する傷害活性を測定したところ、すべてのクローンでVY8特異的CTLの方が優れた抗ウイルス機能を示した。合成ペプチドをパルスした細胞傷害活性でも同様にVY8特異的CTLの方が顕著であった。一方、HLA分子との結合力ではRY11の方が強かったため、HLA分子に対して強い結合力を示す抗原が必ずしも優れたCTL応答を与えるわけではないことが分かった。これらの結果から、CTLの抗ウイルス活性には、抗原ペプチドの性質が大きく影響することが明らかとなった。また、HIV感染症の慢性期に顕著に観察されるCTLの抗ウイルス機能低下は、CTLが認識する抗原が「優れた抗原」から「劣った抗原」にシフトしたことと強く関連すると考えられた。
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Research Products
(1 results)