2006 Fiscal Year Annual Research Report
医療史から見た戦後期の予防接種法と結核予防法の研究
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17590459
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
渡部 幹夫 順天堂大学, 医療看護学部, 教授 (00138281)
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Keywords | 結核 / BCG / 感染症 / 予防接種 / 厚生省 / GHQ / 社会保障 / 国際保健 |
Research Abstract |
感染症と人間の関係は複雑で重大な問題であるが、第二次世界大戦後被占領下の日本では強力な予防接種法と結核予防法を制定して対応した。その医療史的意義を研究した。昭和二十六年施行された結核予防法によりBCG接種の根拠は予防接種法から結核予防法に変わったが、BCG強制接種をめぐり「BCG論争」がおこった。占領下においても国民の健康についての議論が活発に行なわれたが、今回の研究により、その議論の背景にあった福祉と保健衛生予算をめぐる政治的問題が判明した。特に厚生行政をめぐるGHQの関係と日本の学術界を含む政治的状況の一部が明らかとなった。 また、その後の五次にわたる結核実態調査から、積極的にBCGの接種が行われたことと、次第に結核死亡の減少を見たことが明らかとなったが、昭和四十八年までの全調査を通して、感染性肺結核症の六割未満の届出しかされておらず、結核予防法の問題点も明らかにされた。 合わせて、予防接種法成立期のGHQ文書から、戦後期の日本の防疫問題と当時成立した旧予防接種法の問題点が明らかとなりつつある。 現在の世界における、感染症対策は、人とモノの移動が増えた事と共に、新興・再興感染症や細菌テロの可能性などを含めて大きな問題である。『新興・再興感染症に関するアジアリサーチフォーラム2007(長崎)』に出席して日本の戦後医療史と現在の国際保健問題に共通するものを認めた。今後、国際保健的な視野で戦後期の日本医療を研究してゆく方針である。 旧知である、英国の研究者Christopher AldousはTyphus in Occupied Japan(1945-1946) : An Epidemiological Studyを著したが(Japanese Studies, Vol.26,No.3,2006,P.317-333)、渡部の研究を引用しており、今後の研究における国外の研究者としての交流が期待できる。
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Research Products
(3 results)