2005 Fiscal Year Annual Research Report
ホスホエノールピルビン酸の細胞賦活作用を利用した難治性皮膚潰瘍の治癒促進
Project/Area Number |
17590472
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
入江 徹美 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (60150546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森内 宏志 崇城大学, 薬学部, 助教授 (90244144)
井上 雄二 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (30264310)
濱崎 直孝 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (00091265)
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Keywords | ホスホエノーピルビン酸 / 細胞賦活剤 / 糖尿病性皮膚潰瘍 / 細胞増殖 / 細胞増殖因子 / 肉芽形成 / 表皮形成 / 血管新生 |
Research Abstract |
本研究は、生体内リン酸化合物の中で最も高いエネルギーを有し、唯一媒介輸送により細胞膜を透過できるホスホエノールピルビン酸(PEP)の細胞賦活作用に利用して、難治性の糖尿病性皮膚潰瘍の治癒促進を企図したものである。その結果、以下の知見を得た。 1)遺伝的糖尿病マウスを用いた検討において、PEP水溶液の噴霧投与は、軟膏剤投与や腹腔内投与に比べて顕著な創傷面積縮小効果を示した。PEPの効果は、basic fibroblast growth factor(bFGF)製剤とほぼ同等であった。さらに、病理組織学的検討において、bFGF製剤に比べて、PEP噴霧投与では創傷後早期から肉芽組織や表皮および血管の形成促進が認められた。 2)PEPは、マウスマクロファージ系細胞(RAW264)における皮膚潰瘍治癒促進因子であるvascular endothelial growth factor(VEGF)の発現を増加させた。一方、PEPの代謝産物ピルビン酸はVEGFおよびbFGFの発現を増加させた。 3)PEPは、遺伝的糖尿病マウスから初代培養した線維芽細胞の増殖およびコラーゲン産生を抑制した。一方、PEPはヒト皮膚由来線維芽細胞(TIG 109)の増殖に影響を及ぼさなかった。 4)PEPは、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の増殖、細胞遊走および脈管形成を強力に促進し、またVEGFおよびbFGFの発現を促進した。さらに、PEPの脈管形成作用は、VEGF中和抗体により阻害された。 本研究より、PEP水溶液噴霧投与は、bFGF製剤とほぼ同等の皮膚創傷治癒促進効果を示すことが明らかとなった。また、PEPの創傷治癒促進作用は、創傷治癒に重要役割を果たす血管内皮細胞やマクロファージを賦活化し、細胞増殖や創傷治癒促進因子の産生を促すことが関与することが示唆された。
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