2006 Fiscal Year Annual Research Report
癌抑制遺伝子p21を癌の診断に利用するための基礎研究
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17590498
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
福地 邦彦 昭和大学, 医学部, 教授 (70181287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五味 邦英 昭和大学, 医学部, 教授 (60053980)
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Keywords | 癌抑制遺伝子 / サイクリンキナーゼ / p21 / プロテアソーム / 安定性 / lactacystin |
Research Abstract |
悪性腫瘍の予後診断において、癌抑制遺伝子がマーカーとして利用されている。サイクリンキナーゼインヒビターp21は、p53の下流で機能しており、DNA損傷に即応して、細胞周期を停止または遅延させる能力を有することから癌抑制遺伝子としての機能を果たしている。p21は、DNA損傷刺激が加わらず、正常に増殖している際にはプロテアソームで急速に分解される短寿命蛋白であり、DNA損傷時にリン酸化による修飾や細胞内局在部位に依存して、種々の異なる細胞周期制御因子と結合することでプロテアソームでの分解が抑制される。本年度は、p21発現制御機構について、p21分子構造の果たす役割を解析した。 (1)全長164aaのN末側のアミノ酸番号15から48を欠損したmutantの【greater than or equal】15-48Cが極めて不安定であることが明らかとなった。Δ15-48Cはプロテアソームインヒビターlactacystinを加えると安定化した。すなわちN末側15-48を含む構造がp21のプロテアソームによる分解への抵抗性に必須と考えられた。そこで、N末領域のp21安定化機構の解析を行なった。(2)N末領域がΔ15-48Cをtransに安定化するかどうかを確認する目的で、p21N末端1-60または(1-60)×2、(1-60)×3を発現する細胞を作成し、Δ15-48Cを発現させたが安定化しなかった。(3)N末領域のcisの作用を解析する目的で15-48CのN末に1-60を付加したmutantを作成して発現させたところ、lactacystinの有無に関らず安定であった。この結果は、分子内に1-60領域が存在すればプロテアソーム抵抗性となることを示唆した。(4)Δ15-48Cの恒常発現細胞を作成し、その発現と機能を解析した。Δ15-48Cはlactacystinで安定化した。また、6Gyのガンマ線照射後に、mRNA量は変化せずに蛋白発現が増加し、CyclinA, Cdk2との結合も増加した。 以上の結果は、p21安定化には2段階の機構が存在することを示唆する。DNA損傷のない安定的な増殖時における基礎レベルのP21発現には15-48領域が必須であある。また、DNA損傷時には、修飾や他分子との結合など別の機構により蛋白レベルの安定化が起きている機序が推測された。 腫瘍組織の抗癌剤効果を予測する際に、治療前後のp21の細胞内動態が評価に有用と考えられた。
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