2006 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)の病態解明に関する研究
Project/Area Number |
17590514
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
田中 純子 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助教授 (70155266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 惠子 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (50304415)
吉澤 浩司 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (30109954)
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Keywords | HCVキャリア / 健常者集団 / 病態解析 / 自然経過 / 累積罹患率 |
Research Abstract |
無症候性HCVキャリアの病態の肝病態およびその経時的推移を明らかすることにより、検診その他の契機に無症状で見出されたHCVキャリアの健康管理から治療に至る指針を作成し、肝炎・肝がん対策の基礎資料とすることを目的として研究を実施した。 広島県赤十字血液センターにおいて献血を契機に見出されたHCVキャリア1,019例を対象として肝病態およびその経時的推移を調査・解析を行なった。 今年度(平成18年度)は、初年度(平成17年度)に実施した調査票を解析し検討を行ない、下記の結果を得た。 (1)初診時に、男性の62.6%、女性の42.5%が「慢性肝炎」と診断された。 (2)初診時に「慢性肝炎」と診断された症例は、男女ともその約46%がその時点から直ちに治療を開始する必要があると判断された。 (3)5年以上にわたる観察が可能であった408例中、16例が「肝硬変」へ、14例が「肝がん」へ進展した。IFN治療を受けたが病態が進展した例は、無反応例(non-responder)であった。 (4)IFN治療を行なった197例中61例がHCVキャリア状態から離脱していた。 (5)949例を対象とした多変量解析の結果、初診時の年齢が高いと肝発がんのリスクが高い(39歳以下の集団と比較:rerletive risk 37〜190)、女性は男性より肝発がんのリスクが低い(rerletive risk 0.48)。と確認された。また、自覚症状がないが病院初診時に「慢性肝炎」と診断された場合の、10年累積肝発がん率は、初診時年齢が60歳以上:18.7%(年率1.9%)、50歳代:8.7%(年率0.9%)、40歳代:7.2%(年率0.7%)と推計された。 (6)hospital based studyによる肝がん罹患率をみると、C型慢性肝炎からの10年累積肝発がん率は14%、C型肝硬変674例からの10年発癌率は56%(いずれも、池田、虎ノ門病院、2005)、となっており、初診時の年齢別の検討はみられない(癌症例の診断時の年齢の中央値は65歳:33〜89歳)。 本研究は無症状で見出されたHCVキャリアの経時的推移を初診時の年齢別に解析を行なったことによりpopulation basedの累積罹患率を算出することができた。この資料は、2002年から国家プロジェクトとして開始された肝炎ウイルス検診により見出された多くのHCVキャリアの治療指針として有効な資料であり、わが国の肝がん対策の基礎資料として活用できるものと考える。
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