2006 Fiscal Year Annual Research Report
血管マーカーを用いた大脳基底核血腫の外傷性・内因性診断法の開発に関する研究
Project/Area Number |
17590581
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小片 守 鹿児島大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10152373)
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Keywords | 社会医学 / 脳・神経 / 細胞・組織 / 損傷 / アンギオテンシン・コンバーテイング酵素 / アミロイド・プレカーサー蛋白 / 外傷性脳内血腫 / 内因性脳出血 |
Research Abstract |
1.血管マーカーを用いた免疫組織化学の脳内血腫解剖例への応用 (1)自動車事故3週間後に死亡した脳内血腫例への応用 80歳代前半の男性,自動二輪車を運転中,普通自動車と衝突,病院に入院したが3週間後に死亡した例で,病院では内因性脳出血と診断されていた。解剖では頭部はじめ全身に皮下出血を認め,左肋骨骨折,左肺出血とともに左内包を中心とした脳内血腫,脳挫傷,クモ膜下出血を認めた。Amyloid precursor蛋白(APP),neuron-specific enolase(NSE)染色にて軸索変化が検出された。組織検査で血管変化を認めず,血管マーカーであるangiotensin converting酵素(ACE)染色にても染色陽性の血管を認めない。これらの所見を総合して,本例の脳内血腫は外傷性のものであると判定した。本例では血管の免疫染色が外傷性の診断に有用であった。 (2)全身の外表に多数の損傷を認めた脳内血腫例への応用 50歳代前半の女性,飲食店で飲酒,夫とともに徒歩で帰宅途中何度も転倒した。自宅でイビキをかいて眠り続け,翌日夜に全身状態悪化,病院で死亡した例である。解剖では全身に表皮剥脱や皮下出血を認め,左被殻を中心とした脳内血腫,帯状回・海馬回ヘルニアを認めたが,頭蓋内損傷を認めなかった。NSE染色にて脳梁や脳幹に軸索変化が検出された。組織検査で諸所血管壊死を認め,ACE染色にても諸所染色陽性の血管を認めた。これらの所見を総合して,本例の脳内血腫は内因性のものであり,軸索変化はヘルニア等に伴う二次性のものと判断した。血管の免疫組織化学が誤診を防ぐために有用な方法であることが示唆された。
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