2005 Fiscal Year Annual Research Report
砒素中毒の病態形成の分子機構-法医分子中毒学をめざして-
Project/Area Number |
17590582
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
木村 章彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教授 (60136611)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 稔和 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70251923)
石田 裕子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (10364077)
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Keywords | 砒素中毒 / 腎障害 / IFN-γ / MRP1 / TGF-β / Nrf2 / ATF3 / シグナルクロストーク |
Research Abstract |
砒素中毒の病態形成の分子機構を明らかにすることを目的として、今年度はIFN-γ遺伝子欠損マウスを用いてIFN-γの砒素中毒病態形成への関わりについて検討した。まず、IFN-γ遺伝子欠損マウスおよび遺伝的背景を同一とする野生型マウスの背部皮下に亜ヒ酸ナトリウムを投与して経時的に血清尿素窒素およびクレアチニンの測定と生存率を比較し、IFN-γ遺伝子欠損マウスは野生型マウスに比較して砒素による腎障害に対する感受性が有意に高いことを明らかにした。さらにIFN-γ遺伝子欠損マウスの腎における砒素含量は野生型マウスに比較して有意に高く、IFN-γ遺伝子欠損マウスにおいては砒素排泄が野生型マウスに比較して遅延していることが示された。研究代表者らは、すでにABCトランスポーターの一つであるMRP1がマウスの腎における砒素の排泄に主要に関与することを明らかにしているが、IFN-γ遺伝子欠損マウスの腎では砒素によるMRP1の発現誘導が有意に低下していた。このことは、IFN-γがMRP1の発現誘導に関わることを示すものと考えられる。そこでIFN-γによるMRP1発現の制御について更に検討したところ、IFN-γがTGF-βのシグナル伝達を抑制することで転写抑制因子ATF3の発現を抑制し、その結果としてMRP1の発現に直接関わる転写因子Nrf2の活性を亢進してMRP1の発現を増加させることを明らかにした。以上のように、IFN-γはTGF-βとのシグナルクロストークによりABCトランスポーターMRP1の発現が増加するように作用し砒素による腎障害に対して保護的に機能することを明らかにした。
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